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福島恵一

Author:福島恵一
プログレを振り出しにフリー・ミュージック、現代音楽、トラッド、古楽、民族音楽など辺境を探求。「アヴァン・ミュージック・ガイド」、「プログレのパースペクティヴ」、「200CDプログレッシヴ・ロック」、「捧げる-灰野敬二の世界」等に執筆。2010年3~6月に音盤レクチャー「耳の枠はずし」(5回)を開催。2014年11月から津田貴司、歸山幸輔とリスニング・イヴェント『松籟夜話』を開催中。

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冬のソウルのうまいもの-韓国伝統餅菓子「秘苑餅家」  Delicious Foods In Winter Seoul - Korean Traditional Rice Cakes “Biwon”
 昨年12月は「S.O.S」への出演があったため、恒例のクリスマス・イン・ソウルは果たせず、12月初めのソウル行きとなった。出発前には本や雑誌、インターネットなどで情報収集に努め、うまいものの新規開拓に励むのだが、今回紹介するのは飛び込みで開拓したお店。とある美術館からの帰り道、バス停から仁茶洞(インサドン)に向けて歩いていると、小さな店が‥。 何気なくをのぞきこんで、そこに貼られたポスターに写る美しい餅菓子の姿形にハートがキュン! 気がつかずに先を行く妻を呼び止めて店に入ると、ショーケースに並べられた菓子たちの美しいこと。その場で気に入ったものを2種類買い込み、歩きながら食べてみる。肉桂(シナモン)入りの黄粉の付いた花びら餅型の菓子の味わい深いこと。

 餡は胡桃、柚子、棗、栗、松の実、小豆(あっさりした風味はササゲだろうか)等が混ぜ合わされていて、口の中で様々な舌触りと歯触りがゆるやかに弾け、重層的な、それでいて気品高く軽やかに溶け合った味と香りがふうわりとたちのぼる。むっちりと柔らかい餅は微妙に塩気を含み、表面の黄粉や中に包まれた餡の甘みと絶妙なバランスを見せる。
 もともと柚子の皮に胡桃や餅米を詰めて蒸した古来の製法による柚餅子に憧れていて、金沢で見つけて喜んだら中身が白餡で大失望したことがあるのだが、これはそんな私の元に天が遣わされたのではなかろうか‥と思いたくなるくらい私の好みにぴったりだった。
 今回の滞在の最終日には、改めて店を訪れ、その時店頭に出ていた10個を買い占めてしまった。それらは帰宅してすぐに冷凍し、後は解凍して少し温めてから食べている。もったいなくて一度に二人でひとつしか食べられない。ああ‥。(T_T)

 調べると、この菓子はトゥトゥプトクといって、表面に付いているのは皮を剥いた小豆の粉のようだ。王様しか食べられない高級菓子との説明も見られる。もちろん今では広く普及していて、直方体型につくり、赤や青、緑に色づけしてしまうことも多いようだ。
 同じく後で調べてわかったのだが、この店「秘苑餅家(ピウォントッチッ)」は創業60年以上の老舗で、知る人ぞ知る名家のようだ。韓流ドラマでも身分の差を示すためにヒロインが場末の食堂で働いていたりするのでご存知の方も多いと思うが、「儒教の国」韓国では学者や官僚が身分が高い職で、実業、中でも飲食店関係は身分の低い職とされる。このため飲食店が繁盛すると、子どもには跡を継がせず学者や勤め人にしてしまうので、韓国には老舗飲食店が少ない。鐘路タワーのすぐ近くにある陸門(イムン)ソルロンタンが80年以上続いているのが、ソウルでは老舗中の老舗である(ここは昔はスープが濃厚で流石の味だったが、最近は人気チェーン店の神仙ソルロンタンをコピーしたような薄っぺらい味に凋落してしまった)。粽で有名な京都の川端道喜みたいに500年続いている店なんてないのだ。

 ぜひ「秘苑餅家」のホームページ(www.Biwon.net)を訪ねてみてほしい。何種類もの気品ある美しい餅菓子の眼を見張るほど素晴らしい写真(保存できないのが難点)の数々を眺めることができる。通りかかって思わず店に誘い込まれてしまった理由もご理解いただけることだろう。
※餅菓子の写真ページはこちら
 http://biwon.net/front/php/category.php?cate_no=27



「秘苑餅家」の店構え。見過ごしてしまいそうなさりげない佇まい。


ショーケースのディスプレイも品がある。



これがトゥトゥプトク。断面で餡の様子がわかる。

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韓国 | 23:17:30 | トラックバック(0) | コメント(0)
韓国珈琲事情  My Coffee Story in Seoul,Korea
 月光茶房店主の原田正夫さんが、ご自身のブログで韓国からの来店者について書いている(※)。冬のソウルに毎年通うようになって20年近く。その間に彼の地のコーヒー事情もかなり変化した。今回はそのことについて書いてみたい。しばらくヘヴィーなテーマが続いたし、まあ息抜きということで。
 ※http://timbre-and-tache.blogspot.jp/#!/2012/04/blog-post_26.html


1.韓国珈琲事情の激変

 かつて韓国を訪れた人は誰もが経験したことだろうが、20年近く前にはソウルでもリアル・コーヒーはほとんど飲めなかった(数少ない「飲めた場所」については後述)。あるのは色も味もとても薄い代用コーヒー的なもので、ヘーゼルナッツ・オイルの香りが付いている(コーヒー自体の香りもかなり薄い)。タバン(茶房)と呼ばれる喫茶店でコーヒーを注文して出てくるのは、ほぼ間違いなくこれだった。

 まのとのま「無敵のソウル」(初版1998年 スパイク)というマンガによる旅行案内本でも「コーヒーがまずい!!」、さらに「ソウルNo.1コーヒーは自動販売機。うすくない。コーヒーの味がする」と書かれている。自動販売機のコーヒーはインスタントだからか確かに味が違ったのを覚えている(普通のインスタント・コーヒーの味)。ちょっと面白いのは、2002年にアスペクトから出た「無敵のソウル」改訂版ではこのページが差し替えになっていて、何と「ありがとうカフェ・チェーン店」として、Starbucks, Segafredo等が紹介され、「最近のソウルでは普通のコーヒーが普通に飲めるようになった」と書いてのだ。なんという様変わり。しかしこれは本当のことで、ソウルコーヒー事情のあまりの激変ぶりに内容を書き換えざるを得なかったのだろう。

 もともとソウルはあっという間に店が入れ替わり、1年でニョキニョキと新しいビルが建ってしまうのだが、この頃のソウルの街へのカフェ・チェーン店はじめコーヒー・ショップの進出ぶりは凄まじかった。メイン・ストリートの鐘路(チョンノ)のあたりなど、かつてあったちょっといかがわしげなゲーム・センターがみんなつぶれて、片っ端からエスプレッソ・マシーンを入れたコーヒー・ショップになり、さらにテイク・アウト専門のコーヒー・スタンドも山のようにできた。比率的には今の東京のケータイ・ショップよりもずっと多いくらい。また次の年には、これが軒並み閉店して別の店になっていたりするのが、ソウルのスゴイところなのだが、しかし、この機会にStarbucksやAngels in us Coffee等のマシーン・コーヒーは確実に韓国に定着した。2007年に放映されて評判を呼んだTVドラマ「コーヒー・プリンス1号店」の下地は、この時につくられたと言っていいだろう。

 ただし、韓国の人たちがリアル・コーヒーをどこまで好きになったかは保留しておきたい。と言うのは、ソウルがカフェ・チェーン店だらけになっている頃、ソウルで現地の友人たちと食事し、その後、お茶を飲みに行ったら、それまではいつもタバンか伝統茶院(柚子茶とか生姜茶等を出すところ)だったのにStarbucksに案内され、びっくりしていたら「日本人はスターバックスのコーヒーが好きなんだろ」と言われたことがあるから。当時、彼らは私たち日本からの客人を慮って、自分たちはあまり好きではない出来立てのカフェ・チェーン店にわざわざ案内してくれたのだった。もっとも、その後、カフェ・ラテやマキアートみたいな飲み方は定着したみたいだけど。

 
まのとのま「無敵のソウル」(改訂版)

インサドン(仁寺洞)のスターバックス。
歴史的街並み保存のための規制で、
ハングル表記のみの看板になっている。
英語のロゴを掲げていない店舗は
世界でここだけという話(ホント?)。





2.「ハクリム(学林)」という居場

 ソウルでマシーン・コーヒー以外のコーヒー(たとえばハンド・ドリップ)が飲めるところはまだ多くないだろう。以前からずっと通っている老舗を紹介しておきたい。確かこの店を見つけたのは3回目のソウル行きぐらいだから、通い始めて15年くらいになるのだろうか。テハンノ(大学路)をぶらついていて、妻が「リアル・コーヒーを愛する人たちに‥」という貼り紙に気づいたのが、この店「ハクリム(学林=Hakrim)」との出会いだった。

 ここは何と1956年からやっている。もともとテハンノは、「大学路」の名の通り国立ソウル大学(東京大学に当たる)があったところ。ハクリムはソウル大学の番外教室と呼ばれるほど、学生や教授たちから愛されたようだ。その後、ソウル大学は大学病院等、一部施設だけを残し、郊外に移転してしまうが、今でも時々、ソウル大学の同窓生の集まりなんだろうなと思われる年配の一団が、奥のグループ席を占領していることがある(店主のおじさんもいっしょにかしこまって、元教授だったろうおじいさんの話を聞いていたりするのがオカシイ)。これは私の想像だが、リアル・コーヒーを飲む習慣を持ち込み、育てたのは、欧米に留学した教授たちなのではないだろうか。一杯のコーヒーが思考と対話を促し、成熟した文化を育む。

 店内の様子は写真をご覧いただくのがいいだろう。ソウルにファッショナブルなカフェは多いが、ここはあくまで伝統のオールド・スタイル。質素にしてシックな内装の「名曲喫茶」になっている。かけられるのはクラシックだけ。音量はBGMとしては大きめだが、別にかつての日本のジャズ喫茶のように「会話厳禁」ということはない。みんなたいてい3~4人で来て会話を楽しんでいる。オーディオも何回か入れ替わって、現在のスピーカーはクラシック・ファン永遠の憧れだった英国タンノイの同軸2ウェイ。アナログ・プレーヤーはずっとLINNのLP12。会計カウンターの後ろにLPコレクションが見えるが、今はCDがかかっていることが多いようだ。カラヤン、ショルティ、ジュリーニ、ポリーニ、アルゲリッチ等、店内に貼られたドイツ・グラモフォンのアーティストたちのポスターも、オールド・ファンには懐かしいだろう。

 店主のおじさんとはもうすっかり顔なじみになって、たまにサービスでコーヒーのおかわりを注いでくれたりする(アルバイトに任せて店にいない時もあるのが残念)。自家焙煎のブレンドの味も何回か変わったが、今はやや深めのローストで落ち着いているようだ。マシーンも入れてカフェ・ラテ等のエスブレッソ系メニューにも対応するようになったし、セラーを設置してワインも出すようになった。でも、やっぱり客の注文が多いのはハンド・ドリップで淹れたリアル・コーヒー。落ち着いた味わいのブレンドを飲みながら、クリスマスに向け電飾を施された街路樹を2階から眺め下ろしていると、ああ冬のソウルにまた来たんだなとしみじみ思う。キムジャン(キムチを漬け込む時期)とクリスマス準備で慌しい冬のソウルで、そこだけはゆったりとした時間の流れる、私にとってかけがえのない居場所のひとつである。


看板もオールド・スタイル。


中2階席への階段やポスターが見える


中央の照明の向こうにタンノイの姿が‥。


使い込まれたリンのアナログ・プレーヤー。


LPコレクションの下にアンプ類がある。

韓国 | 14:36:59 | トラックバック(0) | コメント(0)
冬のソウルのうまいもの2
 今回のソウルでは珍しく雪に降られた。気温は低くとも、空気が乾いているので、ほとんど雪にならないのだ。乾燥している証拠に道路の脇によけられた雪が、次の日になっても溶けないどころか、依然としてパウダーのようにさらさらのままである。

 市内を流れる清渓川(チョンゲチョン)の雪景色もステキだが、地下鉄6号線セジョル駅を出て、すぐ脇に広がるプルグァン川も素晴らしい。両河岸は遊歩道として整備されていて、子ども用の遊具の代わりに健康器具が設置されており、ウェアに身を包み、ウォーキングをしている人たちも多い。この日は雪の後ということで、ウォーキング組はさすがに少なかったが、そぞろ歩きをする人々でやはりにぎわっていた。川の中には水鳥がいっぱい。
 川を渡って、しばらく行った先にテリム(大林)の市場の入り口が開け、その手前に目指す店はある。黒田福美のガイドブックで知った元祖カムジャック屋。このエリアではなぜかカムジャタン=カムジャ湯ではなく、カムジャック=カムジャ汁と呼ぶ。ちなみにカムジャとはジャガイモのことで、カムジャタン=カムジャックとは、豚の背骨肉とジャガイモを辛いスープで煮込んだ鍋料理のこと。

 行きつけの角の店に入る。メニューはカムジャックの小・中・大しかない。年季の入った鍋をガスコンロにかける。肉やジャガイモはあらかじめ調理されているので、後は上に山と盛られたシュンギクやエゴマの葉がしんなりするのを待つだけ。背骨に付いた肉をかじると、しっかりとした噛み心地ととろりとしたゼラチン質が応える。シュンギクやエゴマの葉のしゃっきりとした歯応え、さわやかな香りが鮮やかなコントラストを描く。だが、カムジャックを食べる醍醐味は、食べ進むうちに、このコントラストが渾然一体溶解して、とろとろの豊かで奥深い「ドローン」と化すところにある。辛さがふうわりと中に漂い、重みのある甘やかさがぐっと舌に乗ってくる。肉と野菜も溶け合って、舌触りと香りが幾重にも響きあう。
 この魔法のようなとろみを生んでいるのが、ジャガイモではないのがすごいところだ。黄色味を帯びた小ぶりの芋が二つ割にされて、鍋の底に潜んでいるのだが、身に水分が少なく(これは大根をはじめ韓国野菜の特徴だろう)、ねっとりと甘く、ぜんぜん煮崩れしない。渾然一体となった汁の味(汁を捨てずに具材を変えて鍋をやり続けると黄金のスープができるという中島らもの話を思い出す)も、このじゃがいもの中までは滲みておらず、口の中で割れるとほっこりと別の色をした空間が開ける。

 ずっと以前に日本で食べた(自称)カムジャタンはいったい何だったんだろうと思わずにはいられない。ただ赤いだけの平坦なスープは、やたらに辛くて味覚を麻痺させた。辛さの向こうに広がる、様々な味や香りの交錯がもたらすべき深い官能は、そこには全く存在しなかった。ただ激辛なだけの貧しい食べ物。新大久保に今もあるその店は依然として行列が絶えないらしい。
 料理でも音楽でも、奥深い文化は常に、表面的な刺激だけでなく、奥深い官能をたたえている。というより、その官能が文化をかけがえないものとして支えているのだ。料理を食べて「激辛だ」で終わってしまうのは、その向こうに広がる官能に感覚が届いていない(あるいは最初から存在しない)証拠である。しばらく前に、日本の即興音楽シーンで音数の少ない演奏が流行ったことを思い出す。そうした演奏を体験して「音数が少ない」と評するのは、「激辛だ」と言うのと同様、その少ない切り詰められた音が、沈黙をどのように浮かび上がらせ、空間を彫琢し、時間を変容させたかをとらえていないことを告白するに等しい。あるいは、そのようなことは何も起こらず、ただ一定時間に発された音の数が少なかったというだけであれば、これはよく言われるように「我慢比べ」にほかなるまい(20倍カレーより40倍カレー。1時間に3音より2時間に3音)。

 具材をあらかた食べ終わって濃厚なスープが残る。鍋の底には、はらりとほぐれた肉の切れ端やジャガイモのかけらが澱んでいる。この中にご飯とごま油をぶち込んで炒め、韓国のりをかけて食するしめ方もあるのだが、それはまた別の料理である。味と香りの濃厚な「ドローン」に浸りきる喜びをさらに深めたいならば、そのまま汁をご飯にかけることをおすすめする。高域に漂う繊細な辛味と香り、中低域をしっかりと支える濃厚な舌触りと甘やかさに、米の粒立ちと軽やかな甘みが加わる。至福のフィナーレである。



穴埋め記事が意外にも一部で好評だったので、図に載ってもう1回書いてみました。おしゃれに書けないのでグルメ・ライターにはなれそうにないなと。



お目当てのカムジャックと付け合せ、店構えなど。
ポテトサラダもおいしいです。


 ちなみに2人なら小で大満足。ジャガイモが少ししか入っていないことがあるので、そういう時はおばさんに「カムジャ、チョムジュセヨ(じゃがいもを少しちょうだい)」とおねだりしてみましょう。

韓国 | 22:35:25 | トラックバック(0) | コメント(0)
冬のソウルのうまいもの
 昨年はクリスマスにソウル入り。前日のイヴは最高気温がマイナス8度だったらしい。とんでもない寒波。冬のソウルに通い始めてもう17年になる。やはり寒いところは寒い時の方が食べ物もおいしいし、街もいきいきしている。12月初めのキムジャン(キムチの漬け込み時期)の賑わい、クリスマスのイルミネーションの素晴らしさ。

 最初のうちはもっぱら明洞や鐘路をうろうろしていたが、最近はホンデ(弘益大学=Hongik University)周辺が一番楽しい。ごちゃごちゃしていた「駐車場通り」もずいぶんキレイになって、アートやデザインに強いホンデらしく、街には小さいながら個性的なブティックやカフェが多い。最近は、ずいぶん観光地化してきたような気がする。これは韓国政府の方針もあるかもしれない。「世界デザイン首都ソウル2010」のイヴェントを打ち出し、インチョン国際空港から都心への地下鉄は、ホンデ駅にアクセスするようになっている。元はソウル大学があったテハンノ(大学路)にはホンデの分校が建設中だ。

 韓屋や韓服を見ても、韓国文化は昔からパッケージ・デザインにこだわりを持っていたと言えるだろう。CDのブックレットやカフェのインテリアもステキなものが多い。空間を大づかみにとらえる力を感じる。ソウルのカフェについては、最近ガイドブックが出たけれど、この国の喫茶店文化が昔から充実していたことは強調しておきたい。韓国の人たちはみんな話し好き、議論好きだからね。

 ホンデでの夕食は決まってソグムクイ(豚肉の塩焼き)。韓国人の友人に教えてもらった店に毎年通っている。この店は焼き方に特色があって、炭火の上に碁石みたいな石を載せた金属の皿を載せ、その上で肉を蒸し焼きにする。あらかじめ少し火を通した大ぶりの肉を灼けた石の上に載せ、端から下のさらに水を注ぎいれるのだ。おそらくは蒸気と遠赤外線のせいで、肉はふっくらこんがりと焼きあがり、余計な脂も落ちている。これにごま油と塩をつけて食べる(もちろんコチュジャン等を添えてサニーレタスに包んでもよい)。テジカルビ(タレに漬けた豚肉の焼肉)よりも、最近人気のサンギョッサル(ハーブ等のタレに漬けた豚の三枚肉の焼肉)よりも絶対おいしい。もうひとつ面白いのは、食べ終わると最後に銀紙に包んだ黒い丸薬とスジョンカ(シナモンの香りを付けた干し柿味のジュース)を出してくれるところ。丸薬は匂いからするとクレオソート系かな。当たらないように‥というおまじないみたい。薬の苦味を和らげるために甘いものを食すというのは日本の「ういろう」の起源と同じですね。

 今回、少し早めの時間に行ったら、全然お客がいなくて心配したが、我々が帰る頃にはほぼ満員になっていた。メニューにはサンギョッサルもあるのだが、ほとんどの客は常連と見えて、みんなソグムクイを頼んでいる。やっぱりおいしいお店は大事にしないとね。実はこの隣の店(以前にこの店が閉まっていた時にやむなく入ったが、たいしてうまくない)が今回大繁盛していて、不思議に思って見てみると、どうやらニューヨーク・タイムスで紹介されたせいらしい。大したことないな。ニューヨークの舌は。
 その後も昼時にやたらと混んでいる店(スンドゥブ屋)を鐘路で見つけ(鐘路タワーのすぐそばのビルの2階)、ためしに入ってみる。こちらはどうやらクリストファー・ヒル国務次官補が来店した店ということで人気らしい。値段は高め。味はまあまあ程度。スンドゥブはもう少し煮つまり感があった方がいいなー。市庁のそばにある有名なコンクスス専門店の前を右へいったところの古い店の方が、ずっとうまいと思う。

 ‥というわけで、なかなかレヴューが書けないので、今回はソウルの食べ物話でした。また、穴埋めにやるかも。



おいしいソグムクイ屋の隣の店。
おいしい店の方は最近、日本語の看板を出しました。
店名は「テジチョブムトン」。ぜひどうぞ。


こちらは鐘路のスンドゥブ屋「カンチョン=甘村」。



韓国 | 23:41:07 | トラックバック(0) | コメント(0)