2010-02-28 Sun
音盤レクチャー「耳の枠はずし」については2/24の記事(カテゴリー:レクチャー日程)をご覧ください。アンビエント・リサーチ@Sound Cafe dzumi行ってきました。予約で満員とのことだったので、このブログで事前告知しなかったのですが。
事前に見ていた内容紹介は次の通り。
■アンビエント・リサーチ
第1回 なぜアンビエントを聴くのか/アンビエントとテクノロジー
「アンビエント・リサーチ」は誰でも参加できる、アンビエント・ミュージックについての連続研究会型イベント。音楽関係者以外の方、学生、キュレーター、エディターの方、美術、映像、建築、医療、科学等に関心のある方、音楽に関心ない方もぜひご参加ください。アンビエント・ミュージックを聴くときに参考になる国内外の参考図書、資料等を見ながら、音源を聴いていきます。個人では限界のあるたくさんの情報へのアクセスに、周辺分野の理解に。アンビエント・ミュージックにまったく詳しくない学生の方もぜひ。
第1回はガイダンス「なぜアンビエントを聴くのか」の後、『音の海:エーテル・トーク、アンビエント・サウンド、イマジナリー・ワールド』の著者、デヴィッド・トゥープの論文「人間は本当に必要か:サウンド・アート、オートマタ、音響彫刻」を解説しながら実際に音源を聴いていく予定です。
主催:虹釜太郎 + 金子智太郎
内容もさることながら、実は虹釜さんの本物を見たくて行ったのですが、予想以上に内容面白かったです。参加者は若い方ばかりでしたね。
かかった音源はDavid Toop&Max Eastley,Jim O'Rourke,Harry Bertoia,Felix Hess,Toshi Ichiyanagi,Takis,Harry Partchなどなど。時間の関係で断片的な紹介にとどまりましたが、トゥープの経歴や参考図書リストの紹介もあり、店主泉さんからのレア盤情報もあり、かなり盛りだくさんでした。
何より良かったのが、二人の掛け合いのゆるいテンポ。絶妙ですね。ツッコミが宙を漂い、度重なる脱線がちゃんと元に戻る不思議な展開。これが心地よい。これは一人だと絶対出せないなと感心しました。いいコンビです。
そうした中で私が一番関心を惹かれたのは、虹釜さんが何度か口走った「ディストピア・アンビエント」なる概念、今日のイベントのバックボーンとなったトゥープの論文「人間は本当に必要か」はオートマタ等の機械の自動演奏くらいで止まっていますが、虹釜さんのヴィジョンでは人間中心視点の廃棄が見据えられているように感じました。「フリー・ミュージックを、演奏者の像を結ぶことなく、演奏者の意図に還元/帰属させることなく聴く」というのが、今回準備しているレクチャーのテーマのひとつなので、これは通底するものがあるのではないかと。おおいに力づけられました(私の一方的な勘違いかもしれないけど)。次回も参加してみたいな。
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2010-02-27 Sat
音盤レクチャー「耳の枠はずし」については2/24の記事(カテゴリー:レクチャー日程)をご覧ください。柴俊一さんのレクチャー行ってきました。
かかった曲目(というか作曲者or演奏者)は次の通り。
①~③ムーンドッグ
④コンロン・ナンカロウ
⑤ラモンテ・ヤング
⑥オーネット・コールマン「フリー・ジャズ」
⑦ケージ「ピアノとオーケストラのためのコンサート」
⑧テリー・ライリー「シュリ・キャメル」
⑨ポーリン・オリヴェロス「ザ・ルーツ・オヴ・ザ・モーメント」
⑩ムシカ・エレットロニカ・ヴィーヴァ「スペースクラフト」
⑪ポルヴェクセル「ポルヴェクセル」
「実験音楽とは」との定義的なところから始まり、エキセントリック、ストレンジャー等の特徴や即興演奏等の原理を紹介し、ジャズの枠組みの縁を意識しながら進めるというまじめかつジャズ喫茶の聴衆を慮った展開。フィリップ・ロベール著「エクスペリメンタル・ミュージック」(NTT出版)自体は、もっとルーズでいい加減な面白主義の本ですけどね(←ほめてます)。
レクチャー後の質疑で「⑦が面白くなかった」という意見が続出。高評価は⑩⑪で、これはフリーを経た人には聴きやすいですよね。⑦ケージは私もよく知らなかったけど、1957~1958年の作品なんですね。図形楽譜+易経仕立てで、ピアノとオケの音色がポツンポツンと‥。「音色が従来のもので『サウンド』として聴けない」のとテンションが上がらないのが不評の理由のようでした。初演(ケージの作曲家活動25周年記念コンサート@ドナウエッシンゲン)でも、「早く終わらせろ」とばかりに途中で拍手が起こったそーです。同時期のヨーロッパの作品は構造バリバリだから、比べて聴けば、音色は似ているのに構成はスカスカ(「風通しがよい」というべきか)なのが際立ったかもしれません。
今日かかったのは、ペトル・コティーク指揮のCDのようでしたが、デヴィッド・チュードアとアンサンブルモデルンがやったDVDもあるみたいですね。これはちょっと観てみたいかも。
2010-02-26 Fri
音盤レクチャー「耳の枠はずし」については2/24の記事(カテゴリー:レクチャー日程)をご覧ください。明日のいーぐる連続講演に、久しぶりに行ってみようと思っています。
内容は次の通り。
第412回 2月27日(土)今回に限り4時より
● 実験音楽とジャズ
フィリップ・ロベール著『エクスペリメンタル・ミュージック』 (NTT出版)は、20世紀初頭からゼロ年代に至る、様々な 「実験的な音楽」を紹介した本ですが、ジャズ・ミュージシャンやジャ ズを経験した音楽家も多く取り上げられています。同書で紹介されている音楽を中心に聴きながら、ジャズと実験音楽の関係を考えます。 解説 柴 俊一
お話をされる柴俊一さんは「エクスペ」の仕掛け人&編集者であるだけでなく、「アヴァン・ミュージック・ガイド」や「200CDプログレッシヴ・ロック」にも関わられています。この2冊には参加させていただいたので、思い出深いです。
ついでに自分のレクチャーの告知ちらしも配らせていただきます。えへへ。
いーぐる 東京都新宿四谷1-8
TEL 03-3357-9857
2010-02-24 Wed
福島恵一音盤レクチャー in Sound Cafe dzumi「耳の枠はずし-不定形の聴取に向けて」告知
貴重なLP・CD等の音盤をかけながらのレクチャー・シリーズです。
どうぞご参加ください。
なお、各回定員25名のため、予約をおすすめします。
料金:各回1000円(1ドリンク付き)
会場:Sound Cafe dzumi
武蔵野市御殿山1-2-3 キヨノビル7F
JR吉祥寺駅南口から徒歩5分
電話:0422-72-7822
予約先:event@dzumi.jp
件名「耳の枠はずし:日付」、本文「氏名、人数、電話番号」
をメールで送付してください。
☆☆スケジュール☆☆
■3月28日(日) 15:00~18:00
第1回 デレク・ベイリーと「音響」以降
「音響以降」と称される作品群とデレク・ベイリーの演奏を聴く。場に沸き立つざわめきの力動と拮抗するため、フリー・ミュージックは最初から音響を取り扱い、個々の演奏者という「結ぼれ」が解けた「力の即興」を目指していた。音盤:Derek Bailey,Phosphor,Toot...
■4月4日(日) 15:00~18:00
第2回 野生の耳がとらえる音景
様々なトラッド音楽は刈り込まれ整えられた優美さを超えて、豊かな倍音が渦巻き、音の身体がぶつかりあうミクロな戦争状態をつくりだしている。そうした音に身を浸しながら、こうした生成を支える「野生の耳」の憑依/獲得を目指す。音盤:Valantin Clastrier,Benat Achiary,Dominique Regef...
■4月25日(日) 15:00~18:00
第3回 アンフォルム 空間の侵食
第1・2回で見てきた即興演奏の2つの流れを、改めて「不定形の聴取」の視点からとらえ直し、空間を満たす沈黙/ざわめきの力動に侵食され、あるいはそこから生成してくる、明確な輪郭を持たず希薄でこわれやすい音の破片/芽吹きに耳を凝らす。音盤:Michel Doneda,Jean Dubuffet,Derek Bailey&Min Tanaka...
■5月9日(日) 15:00~18:00
第4回 複数のことば① 清水俊彦を聴く
フリー・インプロヴィゼーション等の紹介者であり、「不定形の聴取」の実践者というべき清水俊彦の残した言葉をたどり、それに触発されながら音源に耳を傾けることにより、複数のことばの響きあいの中で、彼が眺め見つめていた音の風景をたどる。音盤:Art Ensemble of Chicago,Giuseppi Logan...
■6月6日(日) 15:00~18:00
第5回 複数のことば② ECMカフェ in Sound Cafe dzumi
ECMレーベル全作品をレヴューした「ECM Catalog」の出版に聴き手/書き手として参加した原田正夫氏(月光茶房)と多田雅範氏(元ECMファンクラブ)をゲストに迎え、各々持ち寄ったECM音源を聴きながら、都市空間におけるカフェの本来の機能である複数のことばの響きあいを実践し、聴き手の側から「聴くこと」の公共性の構築を目指す。音盤:Jon Balke,Joe Maneri,Alfred Harth,,,
2010-02-15 Mon
吉祥寺Sound Cafe dzumiでの福島恵一連続レクチャー「耳の枠はずし-不定形の聴取に向けて」ですが、チラシまだ作成中です。お待たせして申し訳ありません。初回3月28日なので、2月中には何とか‥。下に掲載した写真はカール・ブロスフェルトの植物写真です。ミクロな世界に確固たる造形を探った写真は、シュルレアリストたちにも影響を与えました。彫刻の先生だったらしいけど、むしろ建築を思わせますよね。モニュメント的というか。ブロンズか何かのオブジェみたいにも見えるし。プロフィールに載せた写真も彼の作品です。僕が最初に観たのは東京都写真美術館「シュルレアリスムと写真」展でした。一番最後のところに展示されてて、一番驚いたなー。確かジョルジュ・バタイユが編集してた「ドキュマン」にもページ一杯に拡大されて載ったんですよね。ボワファールの足の親指写真よりもこちらの方が好きだな。

2010-02-07 Sun
はじめまして。ふくしまです。音楽誌「ユリシーズ」(シンコーミュージック)でレヴュー書いてます。
今度吉祥寺にあるsound cafe dzumiで連続レクチャーを
させていただけることになり、
そのレクチャーと同じタイトルで、ブログを開設してみました。
レクチャーの内容紹介、執筆活動の報告、CD等のレビューなど、
書いていけたらと思います。
よろしくお願いします。
なお、掲載画像は耳に関するちょっと面白い図柄ということで
19世紀末イタリアの医師で美術鑑定家のジョヴァンニ・モレッリが
採集した各画家の描く耳の形の特徴を並べたものを選んでみました。
彼は絵画作品の作者鑑定には、
最も見過ごしやすい細部を検討する必要があるとして、
(なぜなら贋作者は目立つ特徴を真似するから)
爪や手足の指、そして耳の形に注目すべきとしています。
こうした視点は、ほぼ同時期には、アーサー・コナン・ドイルが
彼の創造した名探偵シャーロック・ホームズの方法として採用している
細部の観察に基づく推理とも共通するものです。
詳しくはカルロ・ギンズブルグ「徴候」(「神話・寓意・徴候」せりか書房)
を参照してください。