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福島恵一

Author:福島恵一
プログレを振り出しにフリー・ミュージック、現代音楽、トラッド、古楽、民族音楽など辺境を探求。「アヴァン・ミュージック・ガイド」、「プログレのパースペクティヴ」、「200CDプログレッシヴ・ロック」、「捧げる-灰野敬二の世界」等に執筆。2010年3~6月に音盤レクチャー「耳の枠はずし」(5回)を開催。2014年11月から津田貴司、歸山幸輔とリスニング・イヴェント『松籟夜話』を開催中。

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ひとりで聴く音楽、みんなでいっしょに聴く音楽 − 「タダマス13」レヴュー  Music to Be Listened to Alone, Music to Be Listened to with Others Together − Review for "TADA-MASU 13th"
 前半5枚のポップ・サイドと後半5枚の「ダーク・サイド」(多田)の対比がくっきりと浮かび上がった回となった。こうした対比は選盤を担当する益子のねらいであったのだろうが、ゲストの服部の予期せぬコメントにより、おそらくは益子の想定をはるかに超えて強調されることになったのではないかと推察する。

タダマス13-1 タダマス13-2 Mehliana、Now Vs NowとMark Juiliana(dr)参加の2作品が続けて披露される。明らかにヒップホップ以降、あるいはサンプリング以降に開かれた、様々なドラム・ブレイクを切り貼りしたような、極端に不均衡で、頻繁にアクセルとブレーキを踏み替え、ゴー/ストップを繰り返す「ドラム・プログラミング的」ドラミング。多田が「MehlianaをCDで聴いて、ドラム・マシンを人力でやっているだけかと思ったが、youtubeのライヴ映像を観て衝撃を受けた」とコメントする。「CDでは、東京サヴィヌル・バッハでキーボード担当の坪口がやっていたドラム・プログラミングと同様のものと聴こえ、キーボードのソロ演奏のように感じられた。これに対しyoutubeの動画ではデュオとして聴こえる」とも。
 ここで、益子が彼らの「ポップさ」を指摘し、服部がポップを志向するのは、自分たちの音を、ジャズ・フェスティヴァルに来るようなファンを超えて、より幅広い層へと届けたいからではないかと述べる。これがこの日のキー・センテンスとなった。

タダマス13-3 タダマス13-4 以降、ヴォーカリストLana Isによる『In Your Head』、そしてこの作品のバッキングに参加していたDan Weiss(dr)による女性ヴォーカリスト3人を含む14人編成での演奏『Fourteen』と、ヴォーカルをフィーチャーした作品が続く。声の手触り/温もり/輪郭の明瞭さ/重さの手応え/実在感‥‥といったものが、聴き手との間を媒介し、作品を聴きやすく、耳になじみやすい「ポップ」なものとしていることがわかる。と同時に、バックの演奏では、ジャズのフィールドで活躍するミュージシャンたちが、高い演奏技術を見せびらかすのではなく、リアルタイムで交感/触発しあう演奏を繰り広げる。ただし、それは本来ならあるはずの展開のプロセスを切り詰め、結果だけを提示するようなものとなっている。服部が、以前なら聴き手はラジオやオーディオに向かい合い、音楽を聴くことだけに専念していたかもしれないが、最近はメディアや情報が溢れている。いろいろなものにアクセスできるし、いろいろなものを観たり聴いたりしたいから、ながら聴きになったり、短時間の聴取になったりする。そうした聴取のやり方に適合していないと、そもそも聴いてもらえないということがあると話す。

 メディア消費のあり方が、音楽の受容に影響を及ぼすのは確かだ。ラジオでのエアプレイからヒットを生み出すことを目指して、3分間のシングルがカットされたのはいい例だろう。ジャズでもシングルがカットされたし、クラシックでもSP盤時代にひとつのアリアだけを切り出したシングルがつくられた。だが70年代初頭にはすでに、これを逆手にとって、あえてシングルをカットしないことにより、自らのイメージの神話化を図るとともに、アルバムを買わせようとしたレッド・ツェッペリンのようなバンドも現れている。

 そうした観点からすれば、ここで言う「ジャズ」は、おそらく自らを「ポップ・ミュージック」の一種と見なしていないのだろうが、外部からの視線が常にそうであるように、ここで「ポップ」に向けられた認識は、ずいぶんと型通りのものとなってしまっている。ポップ・ミュージックの現場では、すでに幾度となく乗り越えられた枠組みが、ここではポップ化のための侵すべからざる鋳型として、ずいぶんと大事にうやうやしく取り扱われているのだ。
 こうした姿勢は、ポップ・ミュージックをジャズよりも「下位」に位置づけるという過ちによるものなのだろうか。「ロックは最も下位の音楽であるが故に、そこでありとあらゆるものを混ぜ合わせることができる」としたロバート・フリップのように、そうした転倒の力がイメージされているならよいのだが。たとえばロックはブルースに対して収奪を繰り返した。これは歴史的事実である。ならば、ブルース・ミュージシャンが演奏すれば、ロックはさらに素晴らしくなると言えるだろうか。

タダマス13-5 後半に入り、John Hebert Trio『Floodstage』から、凍り付いたピアノの響きが聴こえてくると、いつもの「タダマス」の空気が戻ってくる。それは決してピアノを弾いているBenoit Delbecqが「タダマス」の常連奏者だからではあるまい。音数を絞り込みながら暗がりに滲み沁み込んでいくベース(John Hebert)。シンバルの響きを希薄に広げていくドラムス(Gerald Cleaver)。彼らは空間に離ればなれに点在し、スペースをできるだけ広く使おうとしている。アナログ・シンセサイザーのいささか曇った響きが光のもやとなって宙空に浮かび上がり、移ろい漂ってリボンのようにたなびき、たちのぼる響きを新たな方向へと連れ出していく。
 次の曲では三者がもつれ合いながら滾々と湧き出し、音粒子がざっくりとかき混ぜられて乱流をかたちづくっていく。プリペアドされたピアノが少しこもった、スティール・パンやバラフォンに似た南国的な響きを立てる。

タダマス13-6 続いてはKris Davis Trio『Wating for You to Grow』。ドラム(Tom Rainey)だけの連打がグルーヴを積み上げては崩すことをしばらく繰り返し、ベース(John Hebert)が現れると疾走が始まる。しかしピアノ(Kris Davis)は音数少なくぼそぼそとひとりごとを言うに留まる。やがて奇妙に歪んだリフから内部奏法に至ると、リズム・セクションが敏感に反応して、ぎくしゃくととっ散らかったアンサンブルが産み落とされる。アルコ・ベースが異星人の鼻歌を思わせる妙ちきりんなフレーズを奏で、それをきっかけとしてまた疾走が始まる。15分を超える演奏は、そのようにして踊り場を挿みながら曲がりくねった階段を駈け降りるように進められた。
 彼女たちの演奏を評して、服部が「前のトリオでは各々が層をかたちづくっていたのに対し、こちらのトリオは何しろドラムがどんどん合わせるから、全体が一体となって進まざるを得ない。三人が延々と語り合うだけの音楽になっている。」と指摘していたのが興味深かった。そうした「世間話」に興味がある人は耳を傾けるかもしれないが、そうでなければ、何かわかりやすいメッセージやアピールがあるわけでもなく、誰も聴かないだろうというわけだ。なるほど、この指摘は正しいかもしれない。しかし、そうだとして、それではたとえばJ-POPの聴き手は何を聴いているのだろう。ExileやAKB48のファンたちは。私たちがある音楽/演奏を聴いてそれに惹かれる時、私たちはそこに何を聴いているのか、聞こえてくる音の何に反応しているのか‥‥というのが、「タダマス」の掲げている大きなテーマではなかったか。

タダマス13-7 Mary Halvorson / Michael Formanek / Tomas Fujiwara『Thumbscrew』のサウンドを組み替え更新しながらギクシャクと進む演奏、Ingrid Laubrock & Tom Rainey『And Other Desert Towns』の薄暗がりにぼうっと浮かび上がる管の響きに蠅のようにたかるドラムスにいずれもピンと来なかったらしい服部は、最後にかけられたChris Speed / Zeno De Rossi『Ruins』に「こういうの好きですよ」と反応してみせる。輪郭の定かでないぼうっとした響きの移ろい。管の単音/重音からたちのぼる倍音のかげに、さらに打楽器をこする音が重なりあっているようだが、もはや薄暮のうちにひとつに溶け合って、両者の境界すら定かではない。希薄に漂うモノクロームなおぼろさは、空間の広大さを明らかにしながら、世界を密度の濃淡だけに一元化してしまう。ここではたちのぼる虚ろな響きに眼を凝らし、干渉やモジュレーションの度合いを手がかりとして、付かず離れずの微妙な距離感を維持し続けることが、演奏の内実となっている。

タダマス13-8 そこにあるのは先に批判されたKris Davis Trioと同じく、演奏者間に内向きに閉じられた関係性にほかならない。いやむしろこちらの方が、二人の間の関係性がより濃密である分、外に対してそれだけ閉じていると言えるかもしれない。もしそこに外へと届くべきメッセージやアピールがあるとすれば、それは「私たちはあえてこうした演奏をしている。他の仕方ではなく、この仕方を選んでいる」という強烈な主張だろう。だが、それはKris Davis Trioにだって当てはまる理屈だ。単に時代のモードとの関係で、こちらは先端的に見え、あちらは昔ながらの慣習的に見えるに過ぎない。

タダマス13-9 Chris Speed / Zeno De Rossiの演奏について、「ある方向/視点から聴いていくと、聞こえなくなってしまうものがある。全体を一望できない」と益子がコメントしていたのが興味深かった。ここで求められるのは、おぼろな響きのかげの中に奥深く入り込み、触覚を研ぎ澄ます聴取と、そうした盲いた聴き方を補うように、全体をぼうっと見渡し、没入して聴き入っている自分を背中から眺めるが如き「離見の見」という、二つの眼差しのあり方、その両極の往還ではないだろうか。この演奏に対し「Chris Speed的なものをすごく感じる。びんびんと反応する」という多田は、図らずもそうした聴取を実践しているのではないだろうか。

 こうしてプログラムをたどり直すと、前半/後半のポップ/ダークの対比をひとつの構成軸として、ソロ的とも言うべきデュオに始まり、途中に演奏者の共通する二つのピアノ・トリオとひとつのギター・トリオを挿みながら、二人の演奏者の境界を見定め難いデュオに終わるという、もうひとつの構成軸(全てドラム絡みでもある)が浮かんでくる。特に後者の場合、楽器/演奏から離れ、響きを触知する次元の聴取が求められることになる。当日も議論になりかけたが、それは「新しいか古いか」の問題ではあるまい。

 もうひとつ興味深かったのは、服部がしきりに「破綻のなさ」を指摘していたことだった。かつてのフリー・ジャズが破綻しまくったまま、「無責任」に終わってしまうのに対し、これらの演奏はどこまでも破綻しきらない、あるいは破綻しているように見えても演奏者がコントロールを手放さない。さらにはコントロールしきれないことも視野に入れて演奏していると。この指摘は正しいと思う。益子がIngrid Laubrock & Tom Raineyの演奏について、重心の取り方/外し方をポイントに挙げていたように、単にフレーズやリズムの直接的な対応関係にとどまらず、様々な視点からコントロールのカギとなるパラメーターが選ばれている。

 ただ、ここで気になったのは、服部が「ひとりで聴く音楽」と「集まって聴く音楽」という区別から、聴き手の広がらない少人数の聴衆を前にしてのライヴ演奏を例として持ち出し、結局、何を選ぶかは演奏者の特質であり、人生だと述べていたことだ。最後のChris Speed / Zeno De Rossiの演奏を、「これはまさに人生ですよ」と言っていたのも、その延長線上に位置づけられよう。
 ここでは「マイナー音楽」というあり方が、少人数あるいはひとりで聴くこと、マーケットの小ささ、ミュージシャンとしての人生の選択‥‥とあまりにも単純化されて一列につなげられ、そのままメジャーな「ポップ・ミュージック」と二項対比されているように感じられる。もちろんそれが「売れないジャズマンのひがみ」などというものではないことはわかっている。
 だがここには、売れたということは社会に受け入れられたということであり、それゆえその時の社会や人々の心理を反映していると、あまりにも素朴に前提としてしまう、この国の「ヒョーロン」のあり方と同じものを感じてしまう。これはたとえば東浩紀以降のサブカルチャー評論に典型的に見られるもので、売れているアニメやゲームを語ることが、そのまま現代日本社会を論ずることに置き換わってしまう。しかし、「売れたもん勝ち」の議論は、結局のところ、単なる現状肯定論に過ぎず、それはそのまま「売れたかったら売れるようなモノをつくれ」という極めて貧しい自己責任論に容易く転化する。何のことはない、これはマーケティング万能論にほかならず、「売れたものを作っている人は世の中がわかっている」というだけの理屈の組み立てでしかない。あるいは、それを転倒して、「だから世の中を知るためには、何が売れているか見ればよい」と言っているだけなのだ。しかし、マクドナルドやユニクロが何度も持ち上げられては落とされているように、売れ行きが変われば評価も論調もすっかり変わってしまう。詰まる所、ここからは批評は生まれようもない。

 私がディスク・レヴューで採りあげているフリー・インプロヴィゼーションやフィールドレコーディングのCDはたいてい500枚以下、少ないときは100枚程度のリリースである。しかし、世界中で聴かれ、ウェブ・マガジンや批評家のブログ等で闊達に論じられている。『Field Reporter』(※)のようなフィールドレコーディング専門の批評サイトすら存在する。もちろん、インプロヴァイザーの場合はライヴ・ツアーやフェスティヴァルがあるし、あるいは音源が複製されウェブ上で拡散することにより、リリース枚数よりはるかに多くの聴き手の耳に届くことができるから、単にリリース枚数だけを指標に議論することはできないが。
※http://thefieldreporter.wordpress.com

 ジャズ・ミュージシャン=無頼派=社会不適応者などという大昔の図式は、もはや到底成り立たない。80年代半ばですら、北里義之が、当時、黒田京子ORTの新宿Pit Innライヴ時に発行していた『ORT』というミニコミへの寄稿をメンバーに求めると、「ミュージシャンの生活と意見」みたいな大層硬い原稿が上がってきたりしていた。服部の発言はそうしたミュージシャン特有の生真面目さによるものだと思う。しかし、その一方で、この国のマーケティング一辺倒の音楽ジャーナリズムがもたらす「批評不在」に浸され続けたことの及ぼす弊害も、改めて感じるところではある。
 そうした中で、益子・多田が継続している「四谷音盤茶会」は、非常に質が高くかつアクティヴであるにもかかわらず、国内ジャズ・ジャーナリズムからは見向きもされないNYコンテンポラリー・ジャズ・シーンを定点観測し続ける場として、ますます重要かつかけがえのないものとなっている。いささか暴力的な仕方で、ミュージシャンを「聴き手の現場」に連れ出し、ミュージシャンの感じている「現在」を語ってもらうことの意義も、今後、さらに高まっていくだろう。
 服部はChris Speed / Zeno De Rossiについて、「こんなCDを、こんな大人数(その時、室内には20名弱の聴き手がいた)で聴くなんて、一生に一度の体験ですよ」と驚いていた。だが、それが「タダマス」が特異な場であり続けている秘密なのだ。


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ライヴ/イヴェント・レヴュー | 22:35:23 | トラックバック(0) | コメント(0)
DJ選曲対決?  DJ Battle for Music Selection ?
 多田雅範が夢の中のやりとりをブログに書いている。その中に次のような科白がある。
 「ええっ?おれ、そんなこと言ってましたっけ?おれ、それよりも福島さんが以前赤坂のクラブでDJしたときの選曲ってのが知りたいんだよなあ」と頭を抱えている。
http://www.enpitu.ne.jp/usr/bin/day?id=7590&pg=20140423

 おそらく多田はこのことについて、次の後藤雅洋の書き込みで知ったのだろう。

 大昔の話ですが、私は「座って聴くDJ対決」を乃木坂の某クラブで体験しました。出演者は評論家の福島恵一さんと、名前は失念しましたが何人かのDJさん。深夜から明け方まで続くイヴェントで、私はDJもセンスで勝負する点ではジャズ喫茶のレコード係りとまったく同じであることを実感したものです。理由は単純で、明らかに福島さんの選曲感覚がその繫ぎ方を含め優れていて、ほとんど聴いたことのない音楽ジャンルであるにもかかわらず、飽きることがない。これって、いいレコード係り(たとえば旧『ジニアス』の西室さんとか…)のいるジャズ喫茶にいるときの快感とまったく同じなのですよ。
http://ikki-ikki.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/post-105b.html


 本当に昔、もう20年以上も前のことになるだろうか。正確な日時はもはや覚えていない。何とか記憶を掘り起こしてみよう。
 これは確かレコメンデッド・レコーズの日本支部だったロクス・ソルスの企画「レコメン・ナイト」の2回目だった。オールナイトのイヴェントなんだけれど、レコメンデッド・レコーズやその周辺を中心に、新譜をはじめ興味深い作品を紹介してもらえれば‥‥と、ロクス・ソルスの渡邊宏次から直接依頼されたのだった。その際に、CDから曲をかけて、解説して‥‥という形式でもいいけれど、できれば第2部はDJ風に、解説無しで曲だけかけるというのも考えてほしい‥‥とのことだったような気がする。
 会場は赤坂小学校(だったかな?)のそばの地下クラブで、行ってみたら狭いのでびっくりした。ダンス・フロアなんてなかった。もっともあっても困るけど。踊るための曲なんてかけられないし。
 おそらくはクラブなんぞ行ったこともない私を気遣ってだろう、渡邊は「第1回目を担当した坂本理さんはずっと曲をかけては解説し‥の繰り返しだったから、そういうレコード・コンサート方式でも構いませんよ」と声をかけてくれていた。でも、私はせっかくだからと、ノン・ストップでプレイすべき曲のリストをつくった。

 つかみが大切だろうから、まずは頭から強烈なのをぶちかまして、その後もテンションを保ったまま、エッジの鋭さと情報量の多さで乗り切ろう‥‥みたいなことを考えたのではなかっただろうか。そこで選んだのが、まずはMark Feldman『Music for Violin Alone』(Tzadik)から冒頭曲。弦を焼き切らんばかりの苛烈な弓さばき。凄まじいばかりのヴィルトゥオージテの炸裂。鋭い音彩に切り裂かれた空気が傷口を閉じる前に、Alvin Curran『Crystal Psalms』(New Albion)にCD-Jでスイッチ。不定形な詠唱が浮かび上がり、シナゴーグで録音されたと思しき朗唱と混じり合い、以降も混成合唱を基調に、暴力的に場面を切り刻むノイジーな衝撃音の噴出(これがもう迫力満点)、SPレコードからの音源だろうか蜃気楼のようにたちのぼるおぼろな声、暗がりに重く沈んだブラスの高鳴り、子どもたちの声、打楽器の容赦ない連打等が交錯し、浮かんでは消えていく。これは24分の1トラックかけっ放し。その後は確か、John Zorn『Kristallnacht』(eva)から、やはり緻密な重層的コラージュによる冒頭曲「Shtetl」をかけた。「リリー・マルレーン」の断片を含むなど、テイストも似通っていたし。それ以外にも何かかけたような気もするが、よく覚えてはいない。全体で45分くらいじゃなかっただろうか。
 覚えていないと言いながら、それでもDJを務めた第2部のことは、それなりに覚えているようだ。レクチャーを行った第1部でかけた盤のことは本当にまったく覚えていないから、やはりDJ初体験ということで、ものすごく緊張していたし、準備する時にもあれこれ心配したり悩んだりしたから、それだけ深く心に刻まれたのだろうか。

 ちなみにもう一人DJプレイを行ったのが佐々木敦。最近は音楽にはすっかり飽きてしまって、演劇やダンスやJ文学やJ現代思想に精出しているようだが、当時はまだもっぱら「レコメン」中心のライターだった。僕一人じゃ時間が持たないだろうと心配した渡邊が、事前に声をかけていたのだ。彼はすっかりDJ慣れしていて、ただつないでかけるだけの私と違い、ちゃんと器用にCD-Jを操って、複数の音源を重ね合わせたりしていた。それゆえ音の流れは希薄で平坦なものとなるが、むしろそれが通常の「マナー」だったのだろう。情報を圧縮したような濃密重厚な音をかけ続けられては、聴く方も息が続くまい(一方、私は「息をつく間も与えない」ことを目指したわけだが)。ジャンルは主にテクノ・ミュージックだったように思う。The Ecstasy of Saint Theresa『Free-D(Original Soundtrack)』のジャケットが見えたのを覚えている。この盤はジャケットの美しさに惹かれて、私も持っていたので。

 四谷いーぐるに置かせてもらったフライヤーを見て、後藤雅洋は覗きに来てくれたのだろう。誰か連れが1人といた。私の友人も1人聴きに来ていて、私、佐々木、渡邊のスタッフ・サイドを除けば、客は5〜6名じゃなかっただろうか。もう終わる頃になって、イヴェント目当てではないカップル客が入って来た。
 クロージングには、チル・アウトのつもりでChristine Baczewska『Tribe of One』(Pariah Record)から、冒頭曲「As Any Fool Can Plainly See」をかけた。童謡のようにふんわりと、鼻にかかった声が、足下5cmだけ宙に浮いたまま、どこまでも続いていく。外に出るともう夜は白々と明けていた。

【試聴音源】
Mark Feldman『Music for Violin Alone』(Tzadik)
http://espanol.bestbuy.com/site/music-for-violin-alone-cd/2405490.p?id=1676081&skuId=2405490





Alvin Curran『Crystal Psalms』(New Albion)
https://itunes.apple.com/jp/album/crystal-psalms/id51235519





John Zorn『Kristallnacht』(eva)
https://www.youtube.com/watch?v=rn1pERMiK3s






The Ecstasy of Saint Theresa『Free-D(Original Soundtrack)』
https://www.youtube.com/watch?v=sXWJVVV-8xs





Christine Baczewska『Tribe of One』(Pariah Record)
なし







追記
この記事を読んだ多田雅範から連絡があり、私のDJの件を知ったのは、かつて彼が編集に携わっていた『Out There !』誌に連載の後藤氏のコラムであり、それが夢の中で蘇ったのだという。手元にあるバックナンバーを見てみると、vol.6掲載の後藤氏によるコラム「ジャズ喫茶の真実」が、いーぐる連続講座で私が3回シリーズを行ったことを採りあげていて、その中に「何年か前、深夜に赤坂の乃木坂裏のさるクラブで福島さんがDJを務めたイヴェントがあった」とのくだりを発見した。この号が2000年発売だから、やはり90年代半ばのことだったのだろう。


その他 | 15:26:04 | トラックバック(0) | コメント(0)
「タダマス」のパン屋の1ダース  Baker's Dozen for "TADA-MASU"
 益子博之と多田雅範がナヴィゲートするNYコンテンポラリー・ジャズ・シーンの定点観測「四谷音盤茶会」も、早いものでもう13回目。なんと4年目に突入した。確か始めたばかりの頃、聴衆は3人くらいで知り合いばかり。日曜夜のいい時間帯を押さえながら申し訳ないと詫びる益子に対し、綜合藝術茶房喫茶茶会記店主の福地は、ともかく3年続けてみてほしいと語ったと、確か以前に聞いたことがある。

 危ぶまれた集客も、最近は順調に2ケタをキープし、東京に居ながらにして、彼の地の最先端の動向を蝕知できる希有なイヴェントとして、評価が定着しつつあるように思う。毎年NYに定点観測に通う益子のセレクションは、シーンの動向を的確にとらえてみせる。
 もうひとつ重要なのは、単にあらかじめ選ばれた作品がプレイされるだけではなく、相方である多田、そして毎回異なるミュージシャンをゲストに迎え、その三つどもえのやりとりを通じて、作品を、演奏を、音を聴くこと自体を、深く探り当ていくことにある。その中で浮かび上がるのは、個々人の耳のとらえる風景の差異であり、それをもたらす耳の視線の「視差」である。こうした分析を通じて、作品名とかアーティスト名といったインデックス情報の消費にとどまらず、聴くことそのものが毎回みずみずしく生成して来るプロセスに立ち会えるのは、聴き手のひとりとして大きな驚きであり、もちろん喜びである。

 最近アップされたmusicircus「2013年に聴いた10枚」の益子によるセレクション(※)を、ぜひご覧になってみてほしい。ここに記されているのは、益子が選盤の時に聴きとった響きだけではなく、その後の四谷音盤茶会での「上演」を通じて、複数の耳の視線に晒され、多田やゲストのコメントを刻み込まれた結果であり、そうしたプロセスの集積が、聴取を重層的なものにしていることがわかるだろう。
※http://homepage3.nifty.com/musicircus/main/2013_10/tx_7.htm


 もう明日となってしまったが、この貴重な機会をぜひお聴き逃しのないよう、各自万難を排して駆けつけられたい。フライヤー掲載のプロフィール写真をわざわざ更新して(撮影:原田正夫)、4年目に臨む彼らの意気は高い。

 以下は益子によるイヴェント告知からの転載。
 http://gekkasha.jugem.jp/?cid=43767
 なお、多田雅範による告知記事もぜひ参照していただきたい。四谷音盤茶会での彼はもっぱらボケ役を自認しているようだが、いやいや、その前後の脈絡を断ち切るような断言の威力は凄まじい。それは慣習的な「ジャズ耳」の更新というような、これまでの地続きにあるものではなく、むしろ地球外から来た異星人の眼差しのようなところがある。あるいは周回軌道に乗らない「ほうき星」のように、核心を掠めながらたちまちのうちに彼方へと遠ざかる軌跡。その「無頼派」的破壊力が、益子の「構築性」を巧まずして照らし出し、また組み替えを迫る。その様は実にスリリングだ。
 http://www.enpitu.ne.jp/usr/bin/day?id=7590&pg=20140421


masuko × tada = yotsuya tea party vol. 13: information
益子博之×多田雅範=四谷音盤茶会 vol. 13

2014年4月27日(日) open 18:00/start 18:30/end 21:30(予定)
ホスト:益子博之・多田雅範
ゲスト:服部正嗣(ドラム・パーカッション・エレクトロニクス奏者/作曲家)
参加費:¥1,300 (1ドリンク付き)

今回は、2014年第1 四半期(1~3月)に入手したニューヨーク ダウンタウン~ブルックリンのジャズを中心とした新譜CDをご紹介します。13年の総括でもお話しした、周辺領域との境界の曖昧化、スタイルのポップ化はいよいよ顕在化の度を強めているようです。

今回はゲストに、ドラム・パーカッション・エレクトロニクス奏者/作曲家の服部正嗣さんをお迎えすることになりました。ジャズ、即興、エレクトロ、ロック、ポップスとジャンル無用の多彩なプロジェクトで活躍する服部さんは、現在のNYの動向をどのように聴くのでしょうか。お楽しみに。(益子博之)

タダマス13


ライヴ/イヴェント告知 | 17:26:28 | トラックバック(0) | コメント(0)
musicircus 2013年に聴いた10枚  10 Favorite Disks in 2013 @ musicircus
 音楽サイトmusicircusの2013年に聴いた10枚がしばらく前にアップされている。
 http://homepage3.nifty.com/musicircus/main/2013_10/
 私は断捨離できずにまたまた30枚を掲載。それでも掲載していただける度量大きく懐の深いmusicircusに感謝。



 このブログに(不)定期的(?)に掲載しているディスク・レヴューと同様、器楽的インプロヴィゼーション、エレクトロ・アコースティック・インプロヴィゼーション、フィールドレコーディングやアンビエント、ポップ・ミュージックの4本柱で構成しているのだが、これまでの執筆分から、さらに厳選して30枚を選ぶと、そのスペクトルのなだらかな移り変わりや霜降り状の入り組み具合に、境界などまったくわからなくなり、分類などあくまでもとりあえずの目安に過ぎないことを思い知らされる。

 ということで、30枚のリストを転載しておこう。配列の流れや各作品のレヴューについては、前掲のmusicircusのページをご覧いただきたい。







1. John Butcher, Thomas Lehn, John Tilbury / Exta (Fataka)

2. Ikue Mori, Steve Noble / Prediction and Warning (Fataka) 

3. 竹田賢一 / 地表に蠢く音楽ども (月曜社) ※書籍 

4. Benjamin Bondonneau, Michel Doneda / ARR Suite 
(Le Chataignier Bleu) 

5. Michel Doneda, Joris Ruhl / Linge (Umlaut Records) 

6. Elena Kakaliagou,Ingrid Schmoliner, Thomas Stempkowski / Para 
- Ligo (Creative Sources) 

7. 河崎純 / Biologia (Kamrkichi Records) 

8. Christina Kubisch, Eckehard Guther / Mosaique Mosaic 
(Gruenrekorder) 

9. Marc & Olivier Namblard / Cevennes (Kalerne Editions) 

10. Hiroki Sasajima / Circle Wind (Felt Collective) 

11. stilllife / INDIGO (not on a label) 

12. hofli / LOST AND FOUND (rondade) 

13. Alvin Lucier / (Amsterdam) Memory Space (Unsounds) 

14. Antoine Beuger, Jurg Frey / Dedalus (Potlatch) 

15. Kunsu Shim / Love (senufo editions) 

16. 広瀬淳二 / SSI-4 (Hitorri)
17. Ilia Belorukov / Tomsk,2012 04 20[LIVE] (intonema) 

18. Mary Halvorson Trio / Ghost Loop (For Tune Records) 

19. Gerald Cleaver's Black Host (Northern Spy) 

20. Ryosuke Hashizume Group / Visible/Invisible (Apollo Sounds) 

21. Craig Taborn Trio / Chants (ECM) 

22. Various Artists / Longing for the Past (Dust to Digital) 

23. Tibet: Les Chants De L'exil - Songs From Exile (Buda Musique) 

24. Gianluca Becuzzi & Fabio Orsi / Dust Tears and Clouds 
(Silentes Minimal Editions) 

25. A Hawk and a Hacksaw / You Have Already Gone to the Other 
World (L.M.Dupli-Cation) 

26. Irma Osno, Shin Sasakubo / アヤクーチョの雨 (Chichibu Label) 

27. Idassane Wallet Mohamed / Issawat (Sahelsounds) 

28. Han Hee Jung / Everyday Stranger (Pastel Music) 

29. Kang A Sol / Vol.2 (Mirrorball Music) 

30. Earip / This evening, we began the long journey (Electric Muse)


 ついでに関連する他のポールも参照しておこう。
 まずは、私もよく参照しているブログJust Outsideを主宰するBrian Olenwickによる選盤。音響系にかなり傾いてる感じ。この人はKieth Roweが好きというくらいで、割と「作品指向」というよりは「アーティスト指向」の選盤になっていると思う。

Adam Asnan - Inconsistent Images (Entr'acte/Senufo Editions)
Antoine Beuger - 24 petits préludes pour la guitare (Edition Wandelweiser)
Antoine Beuger - sixteen stanzas on stillness and music unheard (l'Innomable)
Antoine Beuger/Jürg Frey - Ensemble Dedalus (Potlatch)
Antoine Beuger/Michael Pisaro - this place/is love (Erstwhile)
Olivia Block – Karren (Sedimental)
Lucio Capece - Less Is Less - Music for Flying and Pendulating Speakers (Intonema)
Stephen Cornford/Samuel Rodgers - Boring Embroidery (Cathnor)
Richard Glover - Logical Harmonies (Another Timbre)
Anne Guthrie/Richard Kamerman – sinter (Erst AEU)
Sarah Hughes - accidents of matter or of space (Suppedaneum)
Haco/Toshiya Tsunoda – TramVibration (Skiti)
Nick Hennies - Duets for Solo Snare Drum (Weighter Recordings)
Nick Hennies - Flourish (Consumer Waste)
Tom Johnson/Samuel Vriezen - The Chord Catalog-Within Fourths/Within Fifths (Wandelweiser)
Mike Majkowski – Why is there something instead of nothing? (Bocian)
Lee Patterson/Vanessa Rossetto - Temperament as Waveform (Another Timbre)
Michael Pisaro - The Middle of Life (Gravity Wave)
Michael Pisaro – The Punishment of the Tribe by Its Elders (Gravity Wave)
Michael Pisaro/Greg Stuart – Close Categories in Cartesian Worlds (Gravity Wave)
Keith Rowe/Graham Lambkin - Making A (Erstwhile)
Peter Streiff – Vokal/Instrumental (Edition Wandelweiser)
Jakob Ullmann - fremde zeit addendum 4 (Edition RZ)


sophie Agnel 続いては英国の誇る全方位敏感音楽誌『The Wire』から、総合チャートはロック中心なので、ジャズ&インプロヴのチャートを。1位のSophie Agnel / John Edwards / Steve Nobleはノー・チェックでした。Clean Feedだから気づいていいはずなのに。Sophie AgnelはMagda Mayasと共にこっち系では要注目。内部奏法冴えまくりで。この二人に御大John Tilburyを加えて、益子・多田推しのCraig Taborn,Kris Davis,Benoit Delbecqに対抗する感じかな。
 Sophie Agnelのトリオのライヴの動画が上がっていました。どうぞご覧あれ。
https://www.youtube.com/watch?v=dSsMEDAtOV4


The Wire Rewind 2013: Jazz & Improv

01. Sophie Agnel / John Edwards / Steve Noble - Meteo

02. John Butcher / Thomas Lehn / John Tilbury - Exta

03. The Convergence Quartet - Slow And Steady

04. Decoy & Joe McPhee - Spontaneous Combustion

05. Klaus Filip / Toshimaru Nakamura / Andrea Neumann / Ivan Placký - Messier Objects

06. Huntsville - Past Increasing Future Receding

07. Sarah Hughes - Accidents Of Matter And Space

08. ist - Berlin

09. Graham Lambkin & Keith Rowe - Making A

10. Sebastian Lexer & Grundik Kasyansky - The Fog

11. Rob Mazurek Exploding Star Orchestra featuring Roscoe Mitchell - Matter Anti-Matter

12. The Remote Viewers - Crimeways

13. Matthieu Ruhlmann - This Star Teaches Bending

14. Seaven Teares - Power Ballads

15. Nate Wooley & Seymour Wright - About Trumpet And Saxophone


ikue mori さらに『The Wire』から即興系に強いライターの選盤を幾つか。Pinnellさんは最近体調が悪そうで心配。ブログThe Watchful Earの更新も滞りがちだし。
 作品ではMaja Ratkje & Ikue Mori / Scrumptious Sabotageとか、やはりノー・チェックだった。良さそうだなー。本当に短い断片が上がっていたので、どうぞー。
http://ratkje.no/2013/06/scrumptious-sabotage/


Richard Pinnell
Patrick Farmer & David Lacey 
Pictures Of Men (Copy For Your Records)

Antoine Beuger & Michael Pisaro 
This Place/Is Love (Erstwhile) 

Sebastian Lexer & Grundik Kasyansky 
The Fog (Dromos) 

Klaus Filip/Toshimaru Nakamura/Andrea Neumann/Ivan Palacky 
Messier Obects (Consumer Waste) 

Stephen Cornford & Patrick Farmer 
A Measure Of Ground (Consumer Waste) 
Antoine Beuger 
24 Petis Preludes Pour La Guitare (Wandelweiser) 

Klaus Filip & Dafne Vicente-Sandoval 
Remoto (Potlach) 

Lucio Capece 
Less Is Less: Music For Flying And Pendulating Speakers (Intonema) 

Mathieu Ruhlmann 
This Star Teaches Bending (3Leaves) 

Sarah Hughes 
Accidents Of Matter And Space (Suppedaneum)


Kurt Gottschalk
Jacques Demierre 
Breaking Stone (Tzadik) 

Chris Abrahams & Alessandro Bosetti 
We Who Had Left (Mikroton) 

Anthony Braxton 
Echo Echo Mirror House (Victo) 

Yannis Kyriakides 
Resorts & Ruins (Unsounds) 

Koch-Schutz-Studer with Shelley Hersch 
Walking And Stumbling Through Your Sleep (Intakt) 

Maja Ratkje & Ikue Mori 
Scrumptious Sabotage (Bocian) 

Evan Parker/Barry Guy/Paul Lytton 
Live At Maya Recordings Festival (Maya) 

John Tilbury 
For Tomasz Sikorski (Bolt/Bocian) 

Jaap Blonk 
Songs Of Little Sleep (Scumbag Relations) 

Jason Cady 
Happiness Is The Problem (Lockstep)


William Hutson
Pharmakon 
Abandon (Sacred Bones) 

Joe Panzner & Greg Stuart 
Dystonia Duos (ErstAEU) 

Jennifer Veillerrobe 
Luftlöcher (Senufo Editions) 

Michael Pisaro 
Closed Categories In Cartesian Worlds (Gravity Wave) 

G*Park 
Sub (23five) 

The Rita 
Escorting (At War With False Noise/Urashima) 

Stephen Cornford & Samuel Rodgers 
Boring Embroidery (Cathnor)

Rene Hell 
Vanilla Call Option (Pan) 

Main 
Ablation (Editions Mego) 

Antoine Beuger 
Cantor Quartets (Another Timbre)




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