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福島恵一

Author:福島恵一
プログレを振り出しにフリー・ミュージック、現代音楽、トラッド、古楽、民族音楽など辺境を探求。「アヴァン・ミュージック・ガイド」、「プログレのパースペクティヴ」、「200CDプログレッシヴ・ロック」、「捧げる-灰野敬二の世界」等に執筆。2010年3~6月に音盤レクチャー「耳の枠はずし」(5回)を開催。2014年11月から津田貴司、歸山幸輔とリスニング・イヴェント『松籟夜話』を開催中。

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映像によるLAFMS  LAFMS on Video
 10月15日(土)、人知れず貴重な催しが行われた。ロサンジェルス・フリー・ミュージック・ソサエティ (LAFMS)の超貴重秘蔵映像を、日本一のオーソリティたる科補(シナプス)氏ことT.坂口氏の解説付きで5時間(!)に渡り観ることができるというもので、限定31名(!!)。主催は知る人ぞ知る特殊音楽限定取扱音盤店「田畑に囲まれた田舎町より日常の中に何かしら変化をもたらしてくれる音楽 & 映像作品を発信するオンライン・ミュージックショップ」Art into Life(!!!)。

 私もたまにLAFMSのアーティストを採りあげたりしますが、元はと言えば、池袋西武アール・ヴィヴァンで入手したフリー・ペーパー「AMALGAM #8」(ピナコテカ・レコード発行)に掲載された「科補おもしろニュース(2)」におけるLAFMS紹介記事(*1)が、LAFMSとの最初の出会いだったのではなかろうか。アール・ヴィヴァンでは、当時、コンピレーション「Darker Scratcher」やLe Forte Four「Spinin' Grin」など、彼らの作品も取り扱っていたし。前者は手に入れたけど、後者は試聴させてもらって迷曲「Japanese Super Heroes」でめげた記憶が‥。それでも懲りずに注目し続け、なぜか大学生協主催の中古盤セールで「Live at Brand」とか拾ったりするのだけれど。
 *1 なんと、次のURLで見ることができます。
   http://f.hatena.ne.jp/chairs_story/20110204193906(p-2)
   http://f.hatena.ne.jp/chairs_story/20110204193908(p-3)
   http://f.hatena.ne.jp/chairs_story/20110204193910(p-4)
   http://f.hatena.ne.jp/chairs_story/20110204193912(p-5)

V.A./ Darker Scratcher
 

Le Forte Four / Spini'n Grin


V.A./ Live at Brand
 


 そうした有り難い「恩師」である坂口氏のお姿も拝めるとあって、イヴェントのご案内をいただき次第、これを逃してなるものかと気合を入れて即予約し、はるばる宇都宮まで行ってまいりました。

 まずは坂口氏による口上をArt into Lifeブログから転載させていただきます。

Slow Life Avant-Garde Tochigi October 2011
栃木県は福島県に隣接しており、3月に発生いたしました東日本大震災・福島原発事故の影響を大きく被っています。その栃木県から全国に先鋭的な音楽を配給しているArt Into Lifeの青柳伸吾さんから、5月中旬にご連絡がありました。私はこれまでロサンジェルス・フリー・ミュージック・ソサエティ (LAFMS) の活動を映像や音楽などで紹介する “Slow Life Avant-Garde” (原題 『プレLAFMS展』) と題した一連の催しを、大阪・心斎橋に在る FUKUGAN GALLERY 様のご厚意に基づき 2007 年より行なっています。昨秋に青柳さんとお会いした際にこの “Slow Life Avant-Garde” を栃木の地でも開催したいのだがとのご相談を受けており、愈々それを実現したいとのご連絡でした。私はこの要請をお受けしましたが、情況を考慮すれば栃木復興支援を目的とするチャリティ企画として行うのが適切ではないかと思い至ります。前記 “Slow Life Avant-Garde” とは別に、私は 1990 年代の後半から阪神淡路大震災からの復興支援を目的とするチャリティ・コンサートを行なって来ました。そして、本年の春に開催されたこのコンサートは東日本大震災からの復興支援をも目指すものとして行われています。その様な経緯がありましたので、栃木で行うのなら是非ともチャリティ企画として行いたい気持ちが湧いて来たのであります。
この意見を送りますと、青柳さんも同じ趣意を持っておられることが判明しました。「それならば、早速催しの準備へ移りましょう」と、話は決まります。会場が栃木なので、設営に関する諸々の仔細は専ら青柳さんにお任せする次第となりました。私の方はLAFMSの方々と話を進め、嬉しいことに 「全面的に協力する」 との有難い申し出を頂戴しております。彼らが昨秋ロンドンにおいて行なった“The Lowest Form Of Music” フェスティヴァルは大成功を収めましたが、その際に公開された映像を提供して下さいます。これに私が持っている映像を併せ、映像とスライド・ショーにてLAFMS の歴史を辿るプログラムを構成いたしました。催しは、午後 3 時から 8 時迄という長丁場にて行います。ご来場頂いた方々と緩やかに交流を持ちながら、楽しく進めたいと思っています。まず、下記の様なコンテンツを用意いたしました。他に、スライド・ショーを用いた解説も行います。

スメグマ “Live In Pasadena” (1973)。
スメグマ “Live In Pasadena” (1975)。
ドゥドゥエッツ “3-2 Minute Segments” (@ Le Forte Four Studio 1976)。
トム・レッシオン映像作品 “Drums By Magic” (1978)。
ドゥドゥエッツ “On Close Radio” (1979)。
トム・レッシオン、リック・ポッツ映像作品 “It’s Halloween” (1980)。
リック・ポッツ 作品 “Shadow Puppets” (1983)。
ダグ・ヘンリー作品 “Red Wrec. Said” (1983、音楽: ドゥドゥエッツ)
ダグ・ヘンリー作品 “Blue Period” (1985、音楽: ジョー・ポッツ、リック・ポッツ、トム・レッシオン、ジョセフ・ハマー)
ダイナソー・ウィズ・ホーンズ映像作品 “Fever Flowers 2” (1987)。
スメグマ “Live in San Francisco” (1992) からの抜粋。
マイケル・イントリエール映像作品 “Extended Organ Debut Concert”(1995)。
ジョー・ポッツ、リック・ポッツ、ジョセフ・ハマー、ギャビー・ストロング、ドン・ボールズ “Sacred Ground” (1999)。
ジョナソン・ローゼン映像作品 “Apartment Thunder” (2006、音楽:ディヴィッド・トゥープ、トム・レッシオン)。
ジョナソン・ローゼン映像作品 “Sleep” (2007、音楽: トム・レッシオン)。

催しの収入 (利益ではありません) からの 50% は、栃木県の市へ寄付されます。
申し訳ございませんが、会場スペースの都合でお客様の数を 31 と限定させて頂きます。
なお、ご参加に際してはご予約をお願いいたしたく存じます。

文責 坂口卓也


イヴェント案内ポスター

拡大画像(下をクリック)



 どーです。すごいプログラムでしょう。途中、結構、休憩が挿まれたので、トータルで4時間強くらいかな。これでもか‥とばかりにLAFMSでした。ご存知のように、彼らの音楽/演奏はなかなか一筋縄では行かず、高純度のサイケデリアに激しく揺すぶられたり、ノイズに金縛りにされたりするだけでなく、何を聴かされて(見せられて)いるのか判然とせず、頭の上に?マークが入道雲のように沸きあがったり、これはもう力なく笑うしかないみたいな超脱力系の展開もあったりするわけです。今回の映像でもそうでした。エスニックな香り漂うサイケデリアがあるかと思えば、巨大芋虫を電話で呼ばれたヒーローが退治し、手品で操られたマレットが宙に浮いたまま太鼓を叩くという‥。

 坂口氏の解説は飄々淡々とした味わい深いものでした。LAFMS結成のくだりで、彼らが生まれたころの音楽状況とか、結成と同時代の日本の音楽状況とかをスライドで見せてくれたり(そーか。あの曲が流行った頃か‥みたいな)とか。原雅明氏の紹介で、ラス・Gからブーバー・レコードつながりでLAFMSを知ったような最近の若い衆には、こうした背景知識が必要でしょうね。それから「日本のLAFMS受容」として、ジョー・ポッツの銀座ルナミ画廊での個展開催から現在に至る流れを紹介してくださったのも良かったです。たとえば「ジャズ・マガジン」での竹田賢一氏による紹介とか、雑誌の表紙はマックス・ローチだし、ちょうど間章がミルフォード・グレイヴスを招聘した時で、その記事が巻頭(この号は以前に古本で入手していました)。そうした中で輸入盤レヴューのページにはLAFMSが紹介されているという、この「落差」。雑誌というメディアの醍醐味てすね。せっかくなのでディスク・レヴューの最後の部分を引用しておきます。

 このジャケットでもわかるとおり、L.A.F.M.S.のミュージシャン(?)たちは、その出発点を60年代後半のザッパやビーフハートに代表されるロックの異化ムーヴメントに持っているのに違いない。次々と輩出したサイケデリック・ロックのグループが、コマーシャルに、また風俗的ファッションへと風化していく中で、フリー・ジャズやヨーロッパのフリー・ミュージック、あるいは電子音楽、テープ音楽などの現代音楽と出会いながら、音楽に与えられる定義を片っ端から反故にしていった人たち。ミドル・ホワイトの自己解体の実験としては。パンクよりはるかに衝撃的な行為がここにはある。そして、これらもフリー・ミュージックなのだ。(「ジャズ・マガジン」1977年11月号)

「ジャズ・マガジン」1977年11月号



 見せていただいた中で、文句無く素晴らしかったのは、最後を締めくくったExtended Organの初ライヴの映像でしたね。ものすごく暗くて粒子の荒れたハイキーでモノクロームな映像が、地の底から沸きあがり、床を這い回るようなヴォイスとエレクトロニクス(ドローンとループ)の混成体のエッジを強調し、サウンドのノイジーなうごめきが、暗い中からハイライトがぬっと現れ、事物の形が浮かび上がる画面を生き物のように息づかせる相乗効果。これはとてつもなくカッコよかった。家へ戻って彼らのCDを聴き返してみて、おそらく同じ演奏を収めたトラックもあったんだけど、これは映像付きの方がはるかにインパクトありました。

Extended Organ / XOXO



 もちろん、比較的最近のSolid EyeやExtended Organ、あるいはかつてのAirwayといったハードエッジな音響だけを切り分けて評価するのは、おそらくLAFMSに対する適切な接し方とは言えないでしょう。奇妙奇天烈なコラージュや酩酊したグルーヴ、幼児退行症的なヴォイスやおバカなパフォーマンス、各トラックの時間配分に基づく負担金制度によるレコード作成や社会的タブーへの苛烈な攻撃、コミューン的な共同生活‥‥といった要素/特徴を、あるひとつの精神のあり方の多種多様な発露/展開ととらえる視点が必要なのではないかと。そうした精神の現われは、たとえばかつてのESPレーベルなどにも見られたかもしれないけど、彼らは60年代的なシーンの高揚が消え失せた70年代後半からこうした活動を始め、その後、現在に至るまでしぶとくやり続けている点は、本当に賞賛すべきものだと思います。
 旦敬介は「ライティング・マシーン-ウィリアム・S・バロウズ」(インスクリプト)で、バロウズの使命は「自由のパトロール」だった。彼の本はその報告書で、そこには敵地の見取り図や自由の処方箋が添付されることになっていた‥と書いています。また、彼はシュタイナーのような霊的な世界が見える人ではないにもかかわらず、自らの身体を実験場とした様々な試みを通じて、我々が常に見ている「現実」以外の次元が確実に存在することを確信しており、それを手探りで探し当てるために作品を書いていた‥と。LAFMSの面々にも似たようなところがあるかもしれません。彼らはバロウズのように孤独ではなく、古くからの仲間たちがいて、そのネットワークを通じて活動しているという違いはあるけれど。そこには靴底に貼り付いたガムのような、「柔らかな不定形の信念」が確かに貫かれているように思えて仕方がありません。


旦敬介
「ライティング・マシーン-ウィリアム・S・バロウズ」
(インスクリプト)

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ライヴ/イヴェント・レヴュー | 23:30:55 | トラックバック(0) | コメント(0)
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