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福島恵一

Author:福島恵一
プログレを振り出しにフリー・ミュージック、現代音楽、トラッド、古楽、民族音楽など辺境を探求。「アヴァン・ミュージック・ガイド」、「プログレのパースペクティヴ」、「200CDプログレッシヴ・ロック」、「捧げる-灰野敬二の世界」等に執筆。2010年3~6月に音盤レクチャー「耳の枠はずし」(5回)を開催。2014年11月から津田貴司、歸山幸輔とリスニング・イヴェント『松籟夜話』を開催中。

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「FTARRI Opening 2 Days」リポート  Report for " FTARRI Opening 2 Days "
 都営地下鉄三田線水道橋駅A1出口から出て、路地を曲がり一本裏通りに入ると、すぐに金刀比羅神社東京分社の鳥居が見える。FTARRIの実店舗はその向かいのビルのB1F(ちなみに1Fは武道の用具ショップ。この辺には多いようで表通りにもある)で、外に出ている案内はささやかなものだが、場所はわかりやすい。金刀比羅神社の向こうには香川県つながりということなのか、讃岐うどんブームの仕掛人「麺通団」のプロデュースしたうどん屋があるのが面白い(リトル香川といったところか)。ライヴ時の腹ごしらえにどうぞ。
 ビルの扉を開けて階下に降りると、防音仕様の二重ドアの向こうにFTARRIの空間が広がる。全体スペースはL字型と言うべきか。手前左にカウンターとキチネットがあり、奥の横長のスペースの左側が壁に設置された棚とその前に置かれた平台にCDが並ぶショップ・スペースであり、右側がPAスピーカー(BOSEのポール型)やアップライト・ピアノの設置されたライヴ・スペースとなっている。ステージの段差はなく、パイプが剥き出しの天井は比較的高い。客席はパイプ椅子やクッションを敷いての床座りだが、30人は入れるのではないか。
 壁は黒塗りのボード、他はコンクリートの打ち放しなのでほとんど飾り気はないが、CD棚は白木系のボードで、ところどころに桜皮細工の茶筒やら焼き物の壷やら、ちょっとCDショップには「場違い」なシックなオブジェが配置されているところが面白い。それと裏腹に壁際のワゴンには100円均一の文庫本が積まれ、露店風の雰囲気を醸し出している。

 実店舗の営業は2日間に渡るオープニング・ライヴの翌日8月6日(月)から始まっている。開店時間は午後4時から8時。ただしライヴがある場合は、その時間設定により変更がある。また、まだ定休日が確定していないようなので(基本的に週末は営業し、平日に週1~2日程度休むとのこと)、来店の際には店舗のホームページ(※)をチェックしてから訪れることをお勧めしたい。あわせてライヴの予定も確認できる。
※http://www.ftarri.com/suidobashi/index.html


FTARRI水道橋店舗の入り口。
ここから地下へ階段を降りていく。


 8月4日(土)・5日(日)の2日間に渡るオープニング・ライヴには両日合わせて8組が出演し、そのうち6組を見ることができた(2日目は体調不良で途中退席したため)。そのうち最も興味深いパフォーマンスを見せてくれたActive Recovering Musicについてリポートしておきたい。
 1日目の最後に登場したActive Recovering Musicはスライドホイッスルの六重奏団で、ほとんどオモチャのような楽器を構えた6人がステージ中央にかなり近接して馬蹄形に並ぶ。楽器構成からして無邪気なトイ・ミュージックか、あるいはコンセプチュアルなパフォーミング・アーツと言うべきメタ・ミュージック的な演奏が予想されたが、実際に演奏されたのは、よりシリアスで確実なサウンドの手触りを持った作品だった
 作品はすべて大蔵雅彦の作曲によるものと思われる(各演奏者の前には譜面台が置かれていた)。演奏開始前にストップウォッチを合わせていたから、時間指定により音出しがコントロールされているのだろう。1曲目は楽器の機構を活かして音程が連続的に変化する下降音を反時計回りにリレーしていくかたちのもの。楽器の特性上、音量が乏しく音の立ち上がりも曖昧で音色も貧弱。さらに音程の変化に伴い音色が微妙に‥というより不安定に変化する。途中から1人ずつではなく2人一組の音出しとなり、こうした楽器の「弱さ」が、多方向から突き動かされ侵食される、より不定形で不安定な広がりを空間に描き出す「強み」へと転じていく。
 2曲目は時間指定をより細かく行っているのだろう。長短・高低様々な音がアンサンブルのあちこちから響いてくる。一音の中での音程の変化が少ない分、音色は先程より安定していて、やや古風なバレル・オルガンのように響く。メロディ主体のアンサンブルではなく、むしろ長短・高低のパターンの順列組合せを幾何学的にアンサンブルに配分した結果、思いがけぬフレーズの断片や和音の切れ端が幻のように浮かび上がる。児童演奏機械にも似たアンティークなメカニカルさが香る場面もあった。
 離散的だった2曲目に対し、3曲目では集合的な音群が操作され、その推移が示される。最後の4曲目は時間指定ではなく、各奏者が行うべきアクションが文章として指示されていたようだった。全員が一度に吹奏を開始し、ドローンと言うには甲高いうなりの中で、大蔵雅彦から順に反時計回りで隣の奏者に音程を移していく。両者は寄り添うように身体を傾け、先の奏者が鳴らしている音程に耳をそばだて聴き取りながらスライドを微調整する。そのようにして移した音程をしばらく奏した後、また右隣の奏者へと伝えていく(その間も他の奏者は変わらず音を出し続けている)。その後の推移を観察すると、おそらくは元の音程よりわずかに高く、それでいて全体と溶け合うポイントを探り、手渡しているように思われる。次第に音程は上ずり、スライドのポイントは上がっていって、何周かした後、もうそれ以上音程を上げられなくなると(スライドが目一杯上がってしまうと)、今度はわずかずつ音程を下げていく方向で、また音の手渡しが始まる。このようにして部分の音程を微妙に上下させながら、他の奏者は順番が回ってくるまで先の音程を保って演奏しているので、そこに音程の相互干渉によるモジュレーションが様々に生じてくる。特に音量が高まった時には、6本あるとはいえ、あんな貧弱なオモチャのような楽器から、こんなにも強靭で強烈な響きが引き出せるものかと眼を見張ることとなった。
 比較的天井が高く、広さはさほどなく、残響も多過ぎないFTARRIのライヴ・スペースは適度の充満/飽和をもたらす点で、このアンサンブルの演奏に適していたように思う(残響が多過ぎれば干渉による音色か鋭くなり過ぎたように思うし、スペースが広過ぎたなら、この密度感は得られなかっただろう)。簡素な仕掛けから豊穣な響きを引き出し、見事に構築して見せた工夫と手際を称えたい。各演奏者がすべきことを淡々とこなした演奏姿勢も、内容にふさわしかったと思う。


Active Recovering Music
(大蔵雅彦、川口貴大、神田聡、古池寿浩、しばてつ、徳永将豪)

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ライヴ/イヴェント・レヴュー | 19:15:27 | トラックバック(0) | コメント(0)
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