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福島恵一

Author:福島恵一
プログレを振り出しにフリー・ミュージック、現代音楽、トラッド、古楽、民族音楽など辺境を探求。「アヴァン・ミュージック・ガイド」、「プログレのパースペクティヴ」、「200CDプログレッシヴ・ロック」、「捧げる-灰野敬二の世界」等に執筆。2010年3~6月に音盤レクチャー「耳の枠はずし」(5回)を開催。2014年11月から津田貴司、歸山幸輔とリスニング・イヴェント『松籟夜話』を開催中。

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文藝別冊『総特集 デヴィッド・ボウイ』  "BUNGEI" Extra Issue Featuring DAVID BOWIE at Full Volume
 長らく更新が滞り、申し訳ありません。今後は継続的に執筆していくようにします。まずは最近の執筆活動の報告から。




 すでに多田雅範がブログで触れてくれているが、5月23日に発売された文藝別冊KAWADE夢ムック『総特集 デヴィッド・ボウイ』(河出書房新社)に執筆している。
 まずは全体に触れておけば、デヴィッド・ボウイの10年ぶりの新作『The Next Day』に照準を合わせた一連の雑誌特集の掉尾を飾るものであり、それにふさわしい充実ぶりと言えるだろう。さすがに創刊号で「世界で最も遅い年間ベスト」を掲げた『ユリシーズ』のメンバー河添剛・平治が企画しただけのことはある。
 内容の充実ぶりについては、表紙と目次をご覧いただくだけで、それと知れよう。特に眼を惹くのは花本彰(新月)、佐藤薫(EP-4)という二人の超カルトなミュージシャンの寄稿だろう。他にもカズコ・ホーキ、阿木譲らがラインナップされているのには驚かされるし、江川隆男、鈴木創士という「フレンチ・コネクション」も『ユリシーズ』らしい。もっとも鈴木はEP-4に参加していたりもするのだが。
 ロンドンで開催されたデヴィッド・ボウイ展のリポートをはじめ、写真やファッション、映画などヴィジュアル・イメージに対してきちんと目配りがなされている点も評価したい。
 肝心の音楽面については、英国ロックの権威である赤川和美がバランスの取れたボウイ通史を執筆し、河添・平による二つの対話とディスコグラフィ(全作品レヴュー)、「ボウイ曼荼羅」と名付けられた関連作品200枚のディスク・レヴューがこれを補強・発展させている。通常はレコーディングやツアーの参加メンバーの作品など「落ち穂拾い」で事足りる部分がこれだけ膨らまざるを得なかったことに、様々な影響関係(単に参照項や元ネタではないことに注意されたい)を公言する「影響を受けることの天才」ボウイの本質が示されている。

 さて今回の私の担当分はディスコグラフィと「ボウイ曼荼羅」のそれぞれ一部。具体的には次の作品を担当させていただいた。

【ディスコグラフィ】
 ダイアモンドの犬
 ロウ
 ヒーローズ
 ロジャー
 ブラック・タイ・ホワイト・ノイズ
 ザ・ブッダ・オヴ・サバービア

【ボウイ曼荼羅】
 V.A. / An Introduction to Entartete Musik
 Charles Mingus / Charles Mingus Presents Charles Mingus
 John Coltrane / Infinity
 Sun Ra / The Magic City
 Gong / Magick Brother, Mystic Sister
 Van Der Graaf Generator / The Least We Can Do Is Wave to Each Other
 Peter Hammill / Fools Mate
 Kestrel / Kestrel
 Gavin Bryars / The Sinking of the Titanic
 Michael Nyman / Decay Music
 Tangerine Dream / Electronic Meditation
 Tangerine Dream / Rubycon
 Neu! / Neu!
 Neu! / Neu! 2
 Eno Moebius Roedelius / After the Heat
 Klaus Schulze / X
 Jac Berrocal / Paralleles
 Lester Bowie / The Great Pretender
 Nurse with Wound / The Second Pirates Session Rock'n Roll Station Special Edition

 後者の企画はもともと河添・平による144枚のセレクションを200枚に拡大したもので、これに当たっては幾つか私の提案も採りあげていただいた。もともとのセレクションが、たとえばボウイ自体が公言している影響源について、通常よく言及されるジャーマン・ロック勢にとどまらず、エルヴィス・プレスリーやリトル・リチャード、あるいはMoondogやHarry Partchなどを含め広範に目配りされたものであったのだが、それ以外の部分について河添・平の選盤は、彼らの対話の内容にもうかがえるように同時代英国ロック・ミュージックへの視線が濃かったため、ジャズ系や現代音楽系を付け加えた次第。
 たとえばジャズに関し、少年時代のボウイが父や兄からの影響でミンガスやコルトレーンを聴き込んだことは伝記的的事実なのだが、具体的な作品名は明らかにされていないようだ。ここでは、ミンガスに関しては時期を考慮して『プレゼンツ・ミンガス』を(さらに文中で『オー・イェー』に触れた)、コルトレーンについてはサウンドの宇宙的広がりを評価して『インフィニティ』を選び(ボウイのサックス演奏には彼の影響は感じられない)、むしろボウイ「スペース・オディティ」や『地球に落ちて来た男』のイメージ戦略に顕著な宇宙へと向かう神話的想像力のつながりで、さらにサン・ラを加えることにした。
 他方、ジャック・ベローカル、ナース・ウィズ・ウーンズは「ジギー・スターダスト」のモデルと言われるヴィンス・テイラーから伸びる線にほかならない。

 ディスコグラフィでは、「宇宙から来たロック・スター」のペルソナを脱ぎ捨て、次いでフィリー・ソウルに魅せられていくまでの間、ジョージ・オーウェルやウィリアム・バロウズをはじめ多種多様な力線に無防備にさらされ、結果として影響関係の層が複雑に入り組んだ大きな屈曲点と言うべき『ダイアモンドの犬』、ポップ・ミュージックの歴史に大きな足跡を残した『ロウ』、『ヒーローズ』(ホントは引用符が重要)、『ロジャー』の所謂「ベルリン三部作」、レスター・ボウイを迎えて再び黒人音楽にオマージュを捧げた『ブラック・タイズ・ホワイト・ノイズ』、ボウイ自身のお気に入りでむしろ「作曲作品集」と呼ぶべき『ザ・ブッダ・オヴ・サバービア』と重要作品を担当させてもらったおかげで、一種「ボウイ論」的な構えでディスク・レヴューを執筆することができた。
 ボウイをポップ・ミュージックに囲い込み解消してしまうのではなく、影響関係の乱反射を通じて文学、映画、政治、政治、美学、社会学、絵画、写真、イメージ分析、美術批評、テクノロジー、ポップ・アート等、多くの領域へと関連づけ解き放つこと。ロンドンやベルリンだけでなく、たびたび参照されるニューヨークやワルシャワへと旅立ち、そこから振り返ること。制作当時の同時代だけでなく、ファシズム美学や全体主義への抵抗、さらにはファシズムによって排除された「頽廃藝術」、ドイツ表現主義等の歴史的地点から、あるいは「ワールド・ミュージック」以降にして、80年代再評価の高まる「現在」の視点から、時代の地層の積み重なりを通して眺めること。そうした「影響されることの天才」デヴィッド・ボウイにふさわしい振る舞いを心がけたつもりである。

 ぜひ書店等で手に取っていただければありがたい。



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執筆活動 | 22:26:11 | トラックバック(0) | コメント(0)
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