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福島恵一

Author:福島恵一
プログレを振り出しにフリー・ミュージック、現代音楽、トラッド、古楽、民族音楽など辺境を探求。「アヴァン・ミュージック・ガイド」、「プログレのパースペクティヴ」、「200CDプログレッシヴ・ロック」、「捧げる-灰野敬二の世界」等に執筆。2010年3~6月に音盤レクチャー「耳の枠はずし」(5回)を開催。2014年11月から津田貴司、歸山幸輔とリスニング・イヴェント『松籟夜話』を開催中。

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ディスク・ユニオンの宝箱の回帰  Return of Treasure Chest at "disk union"
 ディスク・ユニオンの棚やエサ箱が「宝箱」に感じられた時代があった。
 80年代前半、まだ音楽を聴き始めたばかりの頃、雑誌『フールズ・メイト』で仕入れた知識だけを携えて、プログレ・コーナーを中心にレコード店をチェックしていた頃、次第にフリー・インプロヴィゼーションやフリー・ジャズにも興味が広がり出し、清水俊彦や植草甚一の文章、あるいはフィリップ・カルルとジャン=ルイ・コモリによる『ジャズ・フリー』巻末の人名辞典等を頼りに、ディスク・ユニオンの「フリー・ジャズ」コーナーを漁るようになっていった。当時を知らない方には信じられないかもしれないが、その頃のディスク・ユニオンにはIncus,Ogun,FMP,ICP,BVhaast,Bead,Hat ART等はもちろんのこと、Metalangage,Parachute,Trans Museq,Music Gallery Editions,Quartz,HORO等の新譜が入荷していた。これはほんの一例に過ぎないが、当時の私は次のような作品をプレミアの付いた中古盤ではなく、新譜で(時にはバーゲン価格で)入手している。

 Francois Tusques / Piano Prepare (La Chant Du Monde)
 Sonde / En Concert (Music Gallery Editions)
 Tamia / Tamia (T Records)
 Tamia / Senza Tempo (T Records)
 LaDonna Smith,Davey Williams,Theodre Bowen / Folk Music (Trans Museq)
 LaDonna Smith,Davey Williams,Anne LeBaron / Jewels (Trans Museq)
 Musica Elettronica Viva / United Patchwork (HORO)
 Bennink,Megelberg,Rutherford,Schiano / A European Proposal (HORO)

 
   

  


 どれも最近はレアになっているようだが、新譜で入手した当時の私にはそうした有り難みがわかろうはずもなく(現在と違って情報もなかったし)、今となっては甚だ後悔しているのだが、よくわからないままに手放してしまったものも少なくない。
 逆に言うと、そうして手放してしまったものが今度は中古盤となって還流してくるわけで、特に「フリー・ジャズ中古」のコーナーはとんでもない「無法地帯」と化していた。おそらくはノイズ・ミュージック以降に確立される「ノイズ・アヴァンギャルド」という札付け(が適切かどうかはもちろん別として)がまだなかった当時は、60~70年代の残滓である「訳のわからないもの」はみんな「フリー・ジャズ中古」へと不法投棄されていたのである。だからセシル・テイラーやアルバート・アイラーといった由緒正しきフリー・ジャズに混じって、所謂フリー・インプロヴィゼーションはもちろん、新ウィーン楽派やストラヴィンスキー以外の現代音楽のほか、音響彫刻、環境音、演劇、あるいはどこにも紹介されていないヨーロッパのマイナーなグループ等が並んでいた。
 そうした中から私はカールハインツ・シュットックハウゼン、ルチアーノ・ベリオ、ヴィンコ・グロボカール、Nova Musichaシリーズ(Cramps)等を集め、ラモンテ・ヤングを入手し、鈴木昭男を知り、Living TheaterやWelfare Stateの音を耳にし、シンセサイザーを演奏するPaul Bleyに驚かされた。そのほかにも見知らぬ音盤をジャケットにクレジット楽器編成等を頼りに(要はピアノ・トリオやワン・ホーン・クワルテットとは異なる、ストレート・アヘッドではあり得ない怪しげな編成)掘り起こしていった。
 未知の作品をいろいろ教えてもらったという点では池袋アール・ヴィヴァンの存在も大きいのだが、スタッフに相談したり試聴もできる代わりに中古盤は扱っていなかったアール・ヴィヴァンに対し、ディスク・ユニオンの中古盤コーナーには、自分の勘だけを頼りに勝負するスリリングな楽しみがあった。プレミアなど付こうはずもなかったので(何しろ店員もそれが何かわからずに、単に「規格外」と判断してそこに放り込んでいるわけだから)、値段も安かったことがそうしたギャンブルを可能にしてくれていた。

 そうした中から自分なりに「発掘」した代表格として、ここでは二つのグループを簡単に紹介しておこう。
 まずはBBFC (Bovard,Bourquin,Francioli,Clerc)。このスイス出身のトロンボーンとサックスの2管クワルテットは、何より骨太な構築を得意としている。弓弾きを自在に駆使して空間を切り裂きまた綴じ合わせるLeon Francioliの荒々しい雄弁さとOlivier Clercの野太い打撃が切り結び、Jean-Francois BovardとDaniel Bourquinの重心を低く構えた重量感溢れる咆哮がのしかかる。

 


 次いではReform Art Unit及びThree Motions。ウィーンを活動拠点とする不定形のユニットである彼らの核はFritz Novotny(reeds,perc)とMuhammad Malli(dr,perc)の二人。19701年代初めに録音した『Vienna Jazz Avangarde』はもともとESPレーベルからリリースされる予定だったというから、彼の地のフリーの草分けと言っていいだろう。掲げたジャケットのイメージ通りの硬い鉛筆による繊細極まりない細い線の、腺病質で神経症的な震えが寄り集まり編み合わされて、精緻な起伏と明暗の移り変わりを生み出していく。

 


 新譜レヴューは定期的に掲載するが、旧譜についてはあまり採りあげないのは、よくある「廃盤自慢」に陥りたくないからだ。それに妙に好事家の物欲を刺激すると、自分が入手しにくくなるだけだし(笑)。にもかかわらず、こんな話を始めたのは、最近久しくお目にかかることのなかった、この二つのグループの盤をディスク・ユニオンの中古盤コーナーで見かけたからだ。特にBBFC関係については『Montreux 18 julillet 1987』、『Live』、『Cherchez L'Erreur』、『Musique』など未入手の盤も多数あり、早速購入させていただいた。かつてと違い、インターネットでいくらでも情報が入手できるわけだが、プレミアなしの良心的価格だったことを付け加えておこう。
 私が覗いたのは新宿とお茶の水だが、最近、新譜売り場では縮小を続け冷遇されてきたフリー関係が、こと中古盤に関しては盛り上がりを見せているように感じる。CDについてUS買付盤が大量に入荷しているが、アナログがさらに充実している。お茶の水Jazz TokyoではHorace Tapscott with the Pan-African Peoples Arkestra『Live at I.U.C.C.』を、新宿中古センターでは、John Cage「Variation �鵺」収録の米コロンビア盤やPhilip Corner『Piano Work』を、新宿ジャズ館のフリー・ジャズ中古盤セールでは、残り物の中に何と奇才/鬼才Jerome Savary率いるカーニヴァル劇団Le Grand Magic Circus『Les Derniers Jours De Solitude De Robinson Crusoe』を発見。新宿本店6階のオルタナティヴ売り場では、Le Bal De La Contemporaine(Sylvain Kassap,Francois Mechali,Gerard Siracusa,Pablo Cueco等参加の街頭練り歩き的ラテン・バンド)こそいささか値が張ったものの、Harry Partch『Harry Partch』(有名ブートレグ)や『Feldman・Brown』(Mainstream)を割安で入手。さらにはChantal Grimm『Variations En Femmes Majeures』、Les Soeurs Goadec『A Bobino』(La Chant Du Monde)、Chichomeia『Rogaton De Bleu』(Revolm)等の未知の盤を勘に頼って選び出した。ジャケットの説明からLes Soeurs Goadecはブルターニュ、Chichomeiaはオクシタンのそれぞれトラッド演奏であることは知れたが、むしろレーベルの耳を信じての買い物。こうした「掘り出し物」を見つける冒険ができるのは久しぶり。ここまでのラインナップから明らかなように、フリーはフリー、現代音楽は現代音楽ときちんと分割/区分されてしまうのではなく、開けてみるまでは何が潜んでいるかわからない、国境無視の治外法権状態が戻りつつある。最近は「ネットの情報」に必ず先回りされているわけで、「担当者も中身を知らないくせに、こんな高値付けやがって」(失礼)的な失望が多かっただけにうれしい限り。「ユニオンの宝箱が戻ってきた!」とばかりに感激。今後もこうした勇気あるチャレンジを続けてくれることを期待かつ要望したい。

   

  

  

  


 最後の最後でようやく今回のタイトルにたどり着くことができました。前置きの思い出話が長過ぎたかな。ちなみに後で調べたら、Chantal Grimmは大里俊晴が『マイナー音楽のために』で、相変わらずのぼやき口調ながらしっかり言及していました。さすがですね。脱帽。
 ちなみに、いま日本語でこの辺に詳しいサイトとして、新潟にある日本の至宝と言うべきレコード店「SHE Ye,Ye」のページ(※)があります。大里俊晴のレコード棚が引っ越して、彼亡き後も自ら増殖を続けているかのような品揃えは、お店というよりもう立派な文化アルシーヴであります。基本的に1枚ずつの入荷なのですぐ売り切れちゃうんだけど、試聴ファイルはそのまま残されているので、数々のお宝盤に触れることができて、ものすご~く勉強になります。いや~耳福耳福。
※http://www.sheyeye.com

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音楽情報 | 13:11:02 | トラックバック(0) | コメント(0)
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