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福島恵一

Author:福島恵一
プログレを振り出しにフリー・ミュージック、現代音楽、トラッド、古楽、民族音楽など辺境を探求。「アヴァン・ミュージック・ガイド」、「プログレのパースペクティヴ」、「200CDプログレッシヴ・ロック」、「捧げる-灰野敬二の世界」等に執筆。2010年3~6月に音盤レクチャー「耳の枠はずし」(5回)を開催。2014年11月から津田貴司、歸山幸輔とリスニング・イヴェント『松籟夜話』を開催中。

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ジョン・ブッチャー来日!  John Butcher Live Tour in Japan Aug. 2013
 この8月、ジョン・ブッチャーが来日する。彼のサキソフォン演奏の生み出すマイクロ・サウンドの素晴らしさについては、これまで何度も触れてきた。今回は縁あって、ツアー用のチラシに次のような紹介文を書かせていただいた。

 ジョン・ブッチャー:ありとあらゆるサウンド可能性の顕在化
 管の隅々まで緊張をみなぎらせて空間を揺さぶり、あるいは倍音や分割振動、各部の共鳴を操って拡張された音色スペクトルの結晶格子を織り上げるかと思えば、近接マイクにより微細な振動を顕微鏡的に拡大し、フィードバックの眼に見えない回路に耳を澄ます。ジョン・ブッチャーはこうして、サキソフォンが潜在的に有しているありとあらゆるサウンドの可能性を自在に引き出してみせる。その演奏は刻々と移り変わる流動の相の下にあり、舞台上に現れている身体の輪郭は仮初めのものに過ぎない。かつて観たライヴでは、手に持った石を気ままに打ち合わせながらサウンドの視界から姿をかき消してしまう鈴木昭男をとらえようと、センサーの感度を研ぎ澄ますあまり、階段の軋みにすら反応していたっけ。

 今回の招聘元であるJazz & Nowの寺内久は、彼がチラシ表面にキャッチとして引用したスティーヴ・レイクのコメントと私の紹介文の間の響きあいを指摘してくれた。レイクによるコメントの訳文は次の通りである。

 ジョン・ブッチャーのハイパーモダンなサウンド言語は、サクソフォンという楽器の物質性に根ざしたものであり、彼以上にこれを極めた者はない。行くべき「彼方」がある訳でもないだろう。

 寺内は「当初『特質』としていた箇所を『物質性』に修正した」旨を書き添えていた。私はこのことに大層興味を惹かれ、寺内に次のように書き送った。

 レイクの原文を観ていないので、全くの私見となりますが、ここは「物質性」の方が語として適切のように思います。少なくとも私のブッチャーのとらえ方とは一致してきます。
私の読後感では、「特質」とはこれまで顕在化されてきた局面に特化した表現であり、むしろ演奏者の「自己表現」という制約を逃れていないのに対し、「物質性」とはこれまで顕在化されてこなかった潜在的可能性を含むものであり、「自己表現」のくびきから離陸していくもののように思われるからです。

 寺内はレイクによる原文を教えてくれた。

 No one has gone beyond Butcher’s hypermodern language of sounds rooted in the resources of the saxophone; there may not be a “beyond” to go to. 

 問題の箇所の原文は the resourcesである。通常なら「資源」等と訳すところだろう。だが考えてみれば、たとえば現代の代表的な地下資源である石油は、かつては使い道のない黒い水だった。レアメタル類が貴重な資源と化したのもそう昔のことではない。人類の将来を左右する貴重な資源が、それと見定められることなく、どこかに眠っているかもしれない。いまだ潜在化したままで。
 
 自己表現の粋としての即興演奏を求める聴き手には、ジョン・ブッチャーの演奏が超・超絶技巧には舌を巻くものの、輪郭が曖昧で一種とらえどころのない「何が言いたいかよくわからない」ものととらえられてしまうかもしれない。
 これは今日久しぶりに訪れた表参道の月光茶房で、店主である原田正夫が話してくれたことなのだが、デレク・ベイリーと田中泯の共演盤『Music and Dance』は通常のベイリー・ファンには極めて評判が悪いのだそうだ。要は録音が遠く、さらに田中泯がたてる物音や途中から耳を労するばかりに大きくなる雨音(及び雨が屋根を激しく打つ音)のせいで、ベイリーが何を演奏しているか聴き取れないというのだ。
 今でこそこの『Music and Dance』を「空間に侵食される音響」の代表例としてあちこちでプレイしている私も、この作品を初めて聴いた時は途方に暮れたように記憶している。雨音に掻き消されながら淡々とあるいは激しく打ち付けるように演奏を続けるベイリーに「身振り性」を看て取るのがせいぜいではなかったか。しかしAnother Timbreのリリースするエレクトロ・アコースティックな即興演奏やフィールドレコーディング作品により耳の新たな視界が開けると、固い輪郭をまとった人間の身体やもののかたちや運動ではなく、
それらの背後で衝突/交錯する不可視の諸力のせめぎあい皮膚で触知されるようになり、私たちの見る輪郭とは、それらの抗争がかたちづくる移ろいやすい動的平衡の境界面に過ぎないことが見えてくる。

 ジョン・ブッチャーは、グループでは器楽的演奏による対話を仕掛け、ソロではエレクトロ・アコースティックな領野を探索するというように、アプローチを使い分けているようにも見えるが、おそらくは本人も意識しないうちに前者を離脱し、両者を往還してしまう。もし彼のライヴを観ていて不意に輪郭が揺らぎ視界が曖昧さを増したならば、楽器の輪郭に焦点を合わせようとせずに、響きの希薄さに耳を浸し、身体の緊張を解き放ってみてほしい。その時、耳の新たな視界が体幹感覚として開けるだろう。ちょうど初めて水に浮くことができたまぶしい夏の日のように。


 


ジョン・ブッチャー 来日公演2013
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2013年8月3日(土) 水道橋 Ftarri
Ftarri一周年記念大感謝祭 (ゲスト参加)
開場19:00/開演19:30 予約2000円/当日2500円
文京区本郷1-4-11 岡野ビル地下一階
予約・問い合わせ Tel 03-6240-0884 info@ftarri.com

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8月4日(日)神戸 旧グッゲンハイム邸 
Duo with 鈴木昭男(self-made instruments)
開場14:00/開演14:30 予約3500円/当日3800円
兵庫県神戸市垂水区塩屋町3丁目5-17 
予約・問い合わせ Tel 078-220-3924 Fax 078-202-9033
         guggenheim2007@gmail.com

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8月5日(月)京都 パーカーハウスロール 
Trio with 河合拓始(piano, blow-organ) 高岡大祐(tuba)
開場19:30/開演20:00 予約3000円/当日3500円 (ドリンク別)
京都市下京区烏丸通松原下る東側五条烏丸町397
メンバーズゴルフビルBF Tel 075-352-8042(18~25時)
予約・問い合わせ (音波舎) ompasha@auone.jp

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8月7日(水)大阪 島之内教会 
Butcher Solo
開場19:00/開演19:30 予約2500円/当日3000円
大阪市中央区東心斎橋1-6-7 Tel 06-6271-8202
予約・問い合わせ (音波舎) ompasha@auone.jp

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8月8日(木) 六本木 SuperDeluxe 
Duo with 大友良英(guitar, turntable)
開場19:30/開演20:00 予約3800円/当日4300円 (ドリンク別)
港区西麻布3-1-25 B1F
チケット予約 https://www.super-deluxe.com/room/3441/
問い合わせ Tel 03-5412-0515

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8月10日(土) 深谷 ホール・エッグファーム 
Butcher Solo guest : 高岡大祐(tuba)
開場17:00/開演18:00 (食事タイム17:00~)
1ドリンク付 4000円/1ドリンク&1ディッシュ付 5500円 (当日500円増)
埼玉県深谷市櫛挽140-1 ※深谷駅から送迎あり(予約制)
チケット予約 Tel 090-5584-3104(サイトウ) Fax 048-585-6687

問い合わせ Tel 048-585-6685(サイトウ) 

spacewho@hall-eggfarm.com

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8月11日(日) 横浜 エアジン
Duo with Pearl Alexander (contrabass)
開場19:00/開演19:30 
予約3500円/当日3800円 (ドリンク別 500円) ※学割あり
神奈川県横浜市中区住吉町5−60
予約・問い合わせ Tel 045-641-9191 http://yokohama-airegin.com

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8月13日(火) 明大前 キッド・アイラック・アート・ホール
Trio with 石川高(笙) 秋山徹次(guitar)
開場19:00/開演19:30 予約3500円/当日3800円 (ドリンク別 500円)
世田谷区松原2-43-11 
予約・問い合わせ Tel 03-3322-5564 Fax 03-3322-5676 
         http://www.kidailack.co.jp

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8月14日(水) 稲毛 キャンディ 
Butcher Solo
開場19:30/開演20:00 予約4000円/当日4300円 (1ドリンク付)
千葉市稲毛区稲毛東3丁目10-12 
予約・問い合わせ Tel 043-246-7726

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ライヴ/イヴェント告知 | 22:26:59 | トラックバック(0) | コメント(0)
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