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福島恵一

Author:福島恵一
プログレを振り出しにフリー・ミュージック、現代音楽、トラッド、古楽、民族音楽など辺境を探求。「アヴァン・ミュージック・ガイド」、「プログレのパースペクティヴ」、「200CDプログレッシヴ・ロック」、「捧げる-灰野敬二の世界」等に執筆。2010年3~6月に音盤レクチャー「耳の枠はずし」(5回)を開催。2014年11月から津田貴司、歸山幸輔とリスニング・イヴェント『松籟夜話』を開催中。

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2013年ポップ・ミュージック・ディスク・レヴュー その1  Disk Review of Pop Music 2013 vol.1
 ディスク・レヴューをまだ2クールしか終えていないのに、もう12月になってしまった。通常の対象ジャンルである器楽的あるいはエレクトロ・アコースティックなフリー・インプロヴィゼーション、及びドローン、アンビエント、フィールドレコーディング分は、来年1月に11〜12月分+落ち穂拾いを掲載するとして、たまりにたまった2013年ポップス編を何回かに分けて掲載したい。まずはインストゥルメンタルないしはアンサンブル編からの7枚。



La Maquina Cinematica / Musica Para Pantallas Vacias
epsamusic 1157-02
Gustavo Hunt(clarinet),Patricio Villarejo(cello),Leonardo Alvarez(drums,percussion),Exequiet Mantega(piano,direction),Ramiro Gallo(violin),Guido Martinez(bass),Paulina Fain(flute),Pedro Rossi(7 strings guitar),Martin Pantyrer(bass clarinet),Maria Eugenia Caruncho(oboe,cor anglais),Sergio Fresco(violin)
試聴:http://taiyorecord.com/?pid=58602705
 「アルゼンチン音響派」の活躍以来、注目を集める彼の地の音楽だが、彼/彼女たちやあるいはCarlos Aguirre周辺がどうしても「薄味」に感じられてしまい食い足りない私のお気に入りは、Nora Sarmoria(Orquesta Sudamericana)と本アンサンブル。編成の小ささを活かした小回りの効く演奏は、「映写機」とのグループ名通り「シネマ・パラダイス」的な良質なノスタルジアを振り撒きつつ、軽妙洒脱、神出鬼没、躍動感溢れる、また同時にしっとりと語り聴かせるものとなっている。弦と木管の温もりに溢れ、中身の詰まった「肉」の重さを感じさせるアンサンブル(「抱きしめがいのある」と言えば感じが伝わるだろうか。これに比べるとCarlos Aguirre周辺は膝の間に隙間が空いている感じで、どうにもリーン過ぎるのだ)が何とも素晴らしい。2010年と少し以前の作品ではあるのだが、ぜひ紹介しておきたい。


Marcelo Katz & Mudos Por El Celuloide / Ⅰ
Edition De Auther KATZ2011
Eliana Liuni(soprano sax,clarinet,flute,harmonica,harp,voice & etc),Demian Luaces(violin,viola,piano,flute,kazoo,glockenspiel,percussion,voice,radio &etc),Marcelo Katz(pianp,prepared piano,accordion,kazzo,percussion &etc)
試聴:http://www.youtube.com/watch?v=mzckXSNR6q0
http://www.youtube.com/watch?v=pUYHY9lm6jk
 同じくアルゼンチンから映画絡み。こちらは無声映画に音楽を付けるというどこかで聞いたような試み。対象作品もムルナウ、ラング、スタンバーグ、ルネ・クレール、ブニュエル/ダリといかにもなラインナップ。それゆえUn Drame Musical InstantaneやArt Zoydら先達に比べ、演奏は調子外れなラグタイム・ピアノの導入、うがいの音やうなり声の大道芸的使用、アコーディオンとスペリオ・パイプの哀愁滴る共演等、自虐的なまでにパロディックかつパフォーマティヴで、前掲のLa Maquina Cinematicaの夢見るような純粋さとは一線どころか二線も三線も画する、耳目を集めるためにあざといほど考え抜かれたものとなっている。ここまでやれば誰も文句は言うまい。


Inventos / Inventos
ブラジル自主制作 7892860213729
Joana Queiroz(clarinet,bass clarinet,tenor sax,voice), 
Victor Gonçalves(alto sax,soprano sax,accordion,piano,voice), Thiago Queiroz(baritone sax,alto sax,flute,voice), Yuri Villar(tenor sax,soprano sax,voice), Jonas Correa(trombone,bass trombone,voice), Pedro Paulo Junior(trompa de marcha,voice)
試聴:https://soundcloud.com/inventos
   http://taiyorecord.com/?pid=60794616
 木管/金管による流麗な演奏は、ジャズ的なソロ/バッキングによらず、自在にギアを切り替えるメカニカルなリフをはじめ、構築的なアンサンブルに基づく。とは言え室内楽的な息苦しさはなく、次々に花が咲き乱れるような艶やかさは、この国ならでは。この管数にピアノとドラムを加えてビッグ・バンドの厚みを出し、ドビュッシーからストラヴィンスキーに至る近代オーケストレーションをいとも簡単に手中に収め、遠くを見詰める郷愁のブラスバンドを演じて見せるかと思えば、さらには音を濁り震わせて初期ムーグの「異物感」を醸し出す手際の鮮やかさには驚かされるが、冒頭曲はじめ随所に聴かれるパズルのように入り組んだアレンジメントがやはり聴き物か。特にバリトン・サックスはフル稼働で、躍動感溢れるリズムを提供し、わざと濁らせた低音による「ひとりアンサンブル」で全体を支え、あるいは牧歌的な安らぎに満ちた移ろいを漂わせ‥と大活躍。Hermeto Pascoal,Egberto Gismontiの作曲作品も見事に消化され、全体の流れに溶け込んでいる。ブラジル音楽の層の厚さ、底の深さを思い知らされる1枚。


Horacio Salgan con Ubaldo De Lio / Ultimo Concierto
Nuevos Medios NM 15 911
Horacio Salgan(piano), Ubaldo De Lio(guitar)
試聴:http://www.reconquista.biz/SHOP/NM15911.html
 以前に某掲示板でアルゼンチン・タンゴに関する「黒白」論争があり、そこでタンゴは「ジャズとは違って白人音楽」呼ばわりされていた。ジャズ同様もはや「世界音楽」であるタンゴをつかまえて何たる了見の狭さとあきれたものだが、その点、本作はまさに「イロクのタンゴ」と呼ぶべきもの。Astor Piazzolaの緻密さ/流麗さをよそに、Horacio Salganはまぶしいほど強烈な単音の打鍵で、Thelonius Monkにもましてぐわんぐわんと鍵盤をどやしつけ、ピアノ弦を筐体ごとふるわせる演奏は圧巻のひとこと。「一音入魂」で深く響きを彫り刻む様は、鉢巻きを締め版木に眼を擦り付けながら彫刻刀を振るった棟方志功を思わせる。対するUbaldo De Lioもまた負けてはいない。弦はちぎれんばかりに打ちのめされ、特に低弦はベースと聴き紛うぶっとい響きを放つ。2001年の録音当時、Horacio Salgan 85歳、Ubaldo De Lio 72歳。老い先短い年寄り(失礼!)にして初めて可能な、振り返ることなく一直線で言い訳なしに過激な演奏。


Sharron Kraus / Pilgrim Chants & Pastoral Trails
Second Laguage SL024
Sharron Klaus(voice,guitar,dulcimer,organ,recorders,drones,percussion,field recordings),Harriet Earis(harp),Mark Wilden(drums),Simon Lewis(Korg MS20,field recordings)
試聴:http://sharronkraus.bandcamp.com/album/pilgrim-chants-pastoral-trails
   http://www.pastelrecords.com/SHOP/sharron-kraus-pl-1030.html
 NYに生まれ、英国に育ち、フィラデルフィアを拠点として音楽活動を展開していた彼女は、ウェールズの地に恋してそこに移り住む。本作は彼の地の自然とそこから醸し出される音楽により構成されている。本来、歌手であるはずの彼女はここで自らに歌うことを禁じ、言葉を退け、ワードレス・ヴォイスとして水瀬に浮かび、風にたなびくことだけを許している。ここで声は風に水の流れに身をやつしているのだ。それゆえ彼女は声に血が通い、そこにいきいきとした躍動感や生々しさが生じることを恐れる。それは演奏も同じだ。彼女は演奏が独自のグルーヴを有し、フィールドレコーディングされた環境音から離陸することを望まない。中世音楽的なアンサンブルはことさら貧血症的に蒼ざめて立ち尽くし、声は冷ややかに凍り付き、シンセサイザーのさざめきは風の響きと見分け難くひとつになる。土地の精霊に忠誠を誓うがゆえに、強固な意志により塔に幽閉され、地に縛られ、樹の幹に磔にされた音楽。最初はむしろ薄味に感じられるかもしれない。しかし、その不自然極まりない抑制に耳が届けば、背筋に戦慄が走ることだろう。レーベル・メイトであるDirectorsound(Nic Palmer)やPlinth(Mike Tanner)と共通する、人影のない寂れた遊園地で回り続けるメリー・ゴー・ラウンドを思わせる「廃墟機械」の美学。


Robert Piotrowicz / When Snakeboy Is Dying
Musica Genera MG V1
Robert Piotrowicz(modular synthesizer,guitar,piano,vibraphone,software)
試聴:http://robertpiotrowicz.bandcamp.com/album/when-snakeboy-is-dying
 このラインナップの中では異色作。本来はレーベルからしてポップ・ミュージックの範疇ではないのだが、でも私の耳にはむしろ映画音楽的に聴こえる。ブザーのように鳴り渡り空間を埋め尽くすシンセサイザーの彼方で、ピアノが白くきらめき、重く冷たく鳴り響く。あるいは雨の中を通り過ぎる自動車の手前で繊細に爪弾かれるアコースティック・ギター。電圧変換機のような息苦しいうなりと張り詰めた電子音の壁。純度の高い幾何学的抽象性を達成していながら、サウンド・シークェンスは常に情景喚起的であり、掌に冷たい汗を感じさせる静謐にして緊迫したサスペンス的感覚に溢れている。きっぱりと切れのいいモンタージュのタイミングも心地よい。370枚限定ホワイト・ヴァイナルLP。


Sonicbrat / Stranger to My Room
Kitchen Label No.13
Darren Ng(piano,piano percussion,prepared piano,toy piano,melodica,acoustic guitar,small hand bells,xylophone,violin,violin bow,cello,electronics,contact microphones,marbles)
試聴:http://www.pastelrecords.com/SHOP/sonicbrat-pl-1001.html
 かそけきひびきのつましいおとたちがつくりだすはくちゅうむのようにおきわすれられたおんがく。ゆるゆるとたゆたうまどろみ。まぶたのうらでちらつくかげとひかり。まるでかおりをたのしむようによいんにすまされるみみ。ゆびさきといきのほさきでさぐられるねいろとたいみんぐ。でもここにはわずかなずれもゆるさないきびしさがある。「まちがったおと」はただちにしょうきょされくうかんにとどまることをいっしゅんたりともゆるされない。さてぃのひからびたひゅーもあはここにはない。すんぶんのくるいもないちらかりかた。じぶんだけのおうこくのひじょうなおきて。たてながのあつがみによるじゃけっとにはてんがなかたおしがほどこされ、でじゃゔゅをさそうふしぎなしゃしんのかずかずがとじこまれている。
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ディスク・レヴュー | 00:24:39 | トラックバック(0) | コメント(0)
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