■プロフィール

福島恵一

Author:福島恵一
プログレを振り出しにフリー・ミュージック、現代音楽、トラッド、古楽、民族音楽など辺境を探求。「アヴァン・ミュージック・ガイド」、「プログレのパースペクティヴ」、「200CDプログレッシヴ・ロック」、「捧げる-灰野敬二の世界」等に執筆。2010年3~6月に音盤レクチャー「耳の枠はずし」(5回)を開催。2014年11月から津田貴司、歸山幸輔とリスニング・イヴェント『松籟夜話』を開催中。

■最新記事
■最新コメント
■最新トラックバック

■月別アーカイブ
■カテゴリ
■リンク
■検索フォーム

■RSSリンクの表示
■リンク
■ブロとも申請フォーム
■QRコード

QR

DJ選曲対決?  DJ Battle for Music Selection ?
 多田雅範が夢の中のやりとりをブログに書いている。その中に次のような科白がある。
 「ええっ?おれ、そんなこと言ってましたっけ?おれ、それよりも福島さんが以前赤坂のクラブでDJしたときの選曲ってのが知りたいんだよなあ」と頭を抱えている。
http://www.enpitu.ne.jp/usr/bin/day?id=7590&pg=20140423

 おそらく多田はこのことについて、次の後藤雅洋の書き込みで知ったのだろう。

 大昔の話ですが、私は「座って聴くDJ対決」を乃木坂の某クラブで体験しました。出演者は評論家の福島恵一さんと、名前は失念しましたが何人かのDJさん。深夜から明け方まで続くイヴェントで、私はDJもセンスで勝負する点ではジャズ喫茶のレコード係りとまったく同じであることを実感したものです。理由は単純で、明らかに福島さんの選曲感覚がその繫ぎ方を含め優れていて、ほとんど聴いたことのない音楽ジャンルであるにもかかわらず、飽きることがない。これって、いいレコード係り(たとえば旧『ジニアス』の西室さんとか…)のいるジャズ喫茶にいるときの快感とまったく同じなのですよ。
http://ikki-ikki.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/post-105b.html


 本当に昔、もう20年以上も前のことになるだろうか。正確な日時はもはや覚えていない。何とか記憶を掘り起こしてみよう。
 これは確かレコメンデッド・レコーズの日本支部だったロクス・ソルスの企画「レコメン・ナイト」の2回目だった。オールナイトのイヴェントなんだけれど、レコメンデッド・レコーズやその周辺を中心に、新譜をはじめ興味深い作品を紹介してもらえれば‥‥と、ロクス・ソルスの渡邊宏次から直接依頼されたのだった。その際に、CDから曲をかけて、解説して‥‥という形式でもいいけれど、できれば第2部はDJ風に、解説無しで曲だけかけるというのも考えてほしい‥‥とのことだったような気がする。
 会場は赤坂小学校(だったかな?)のそばの地下クラブで、行ってみたら狭いのでびっくりした。ダンス・フロアなんてなかった。もっともあっても困るけど。踊るための曲なんてかけられないし。
 おそらくはクラブなんぞ行ったこともない私を気遣ってだろう、渡邊は「第1回目を担当した坂本理さんはずっと曲をかけては解説し‥の繰り返しだったから、そういうレコード・コンサート方式でも構いませんよ」と声をかけてくれていた。でも、私はせっかくだからと、ノン・ストップでプレイすべき曲のリストをつくった。

 つかみが大切だろうから、まずは頭から強烈なのをぶちかまして、その後もテンションを保ったまま、エッジの鋭さと情報量の多さで乗り切ろう‥‥みたいなことを考えたのではなかっただろうか。そこで選んだのが、まずはMark Feldman『Music for Violin Alone』(Tzadik)から冒頭曲。弦を焼き切らんばかりの苛烈な弓さばき。凄まじいばかりのヴィルトゥオージテの炸裂。鋭い音彩に切り裂かれた空気が傷口を閉じる前に、Alvin Curran『Crystal Psalms』(New Albion)にCD-Jでスイッチ。不定形な詠唱が浮かび上がり、シナゴーグで録音されたと思しき朗唱と混じり合い、以降も混成合唱を基調に、暴力的に場面を切り刻むノイジーな衝撃音の噴出(これがもう迫力満点)、SPレコードからの音源だろうか蜃気楼のようにたちのぼるおぼろな声、暗がりに重く沈んだブラスの高鳴り、子どもたちの声、打楽器の容赦ない連打等が交錯し、浮かんでは消えていく。これは24分の1トラックかけっ放し。その後は確か、John Zorn『Kristallnacht』(eva)から、やはり緻密な重層的コラージュによる冒頭曲「Shtetl」をかけた。「リリー・マルレーン」の断片を含むなど、テイストも似通っていたし。それ以外にも何かかけたような気もするが、よく覚えてはいない。全体で45分くらいじゃなかっただろうか。
 覚えていないと言いながら、それでもDJを務めた第2部のことは、それなりに覚えているようだ。レクチャーを行った第1部でかけた盤のことは本当にまったく覚えていないから、やはりDJ初体験ということで、ものすごく緊張していたし、準備する時にもあれこれ心配したり悩んだりしたから、それだけ深く心に刻まれたのだろうか。

 ちなみにもう一人DJプレイを行ったのが佐々木敦。最近は音楽にはすっかり飽きてしまって、演劇やダンスやJ文学やJ現代思想に精出しているようだが、当時はまだもっぱら「レコメン」中心のライターだった。僕一人じゃ時間が持たないだろうと心配した渡邊が、事前に声をかけていたのだ。彼はすっかりDJ慣れしていて、ただつないでかけるだけの私と違い、ちゃんと器用にCD-Jを操って、複数の音源を重ね合わせたりしていた。それゆえ音の流れは希薄で平坦なものとなるが、むしろそれが通常の「マナー」だったのだろう。情報を圧縮したような濃密重厚な音をかけ続けられては、聴く方も息が続くまい(一方、私は「息をつく間も与えない」ことを目指したわけだが)。ジャンルは主にテクノ・ミュージックだったように思う。The Ecstasy of Saint Theresa『Free-D(Original Soundtrack)』のジャケットが見えたのを覚えている。この盤はジャケットの美しさに惹かれて、私も持っていたので。

 四谷いーぐるに置かせてもらったフライヤーを見て、後藤雅洋は覗きに来てくれたのだろう。誰か連れが1人といた。私の友人も1人聴きに来ていて、私、佐々木、渡邊のスタッフ・サイドを除けば、客は5〜6名じゃなかっただろうか。もう終わる頃になって、イヴェント目当てではないカップル客が入って来た。
 クロージングには、チル・アウトのつもりでChristine Baczewska『Tribe of One』(Pariah Record)から、冒頭曲「As Any Fool Can Plainly See」をかけた。童謡のようにふんわりと、鼻にかかった声が、足下5cmだけ宙に浮いたまま、どこまでも続いていく。外に出るともう夜は白々と明けていた。

【試聴音源】
Mark Feldman『Music for Violin Alone』(Tzadik)
http://espanol.bestbuy.com/site/music-for-violin-alone-cd/2405490.p?id=1676081&skuId=2405490





Alvin Curran『Crystal Psalms』(New Albion)
https://itunes.apple.com/jp/album/crystal-psalms/id51235519





John Zorn『Kristallnacht』(eva)
https://www.youtube.com/watch?v=rn1pERMiK3s






The Ecstasy of Saint Theresa『Free-D(Original Soundtrack)』
https://www.youtube.com/watch?v=sXWJVVV-8xs





Christine Baczewska『Tribe of One』(Pariah Record)
なし







追記
この記事を読んだ多田雅範から連絡があり、私のDJの件を知ったのは、かつて彼が編集に携わっていた『Out There !』誌に連載の後藤氏のコラムであり、それが夢の中で蘇ったのだという。手元にあるバックナンバーを見てみると、vol.6掲載の後藤氏によるコラム「ジャズ喫茶の真実」が、いーぐる連続講座で私が3回シリーズを行ったことを採りあげていて、その中に「何年か前、深夜に赤坂の乃木坂裏のさるクラブで福島さんがDJを務めたイヴェントがあった」とのくだりを発見した。この号が2000年発売だから、やはり90年代半ばのことだったのだろう。
スポンサーサイト


その他 | 15:26:04 | トラックバック(0) | コメント(0)
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

FC2Ad