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福島恵一

Author:福島恵一
プログレを振り出しにフリー・ミュージック、現代音楽、トラッド、古楽、民族音楽など辺境を探求。「アヴァン・ミュージック・ガイド」、「プログレのパースペクティヴ」、「200CDプログレッシヴ・ロック」、「捧げる-灰野敬二の世界」等に執筆。2010年3~6月に音盤レクチャー「耳の枠はずし」(5回)を開催。2014年11月から津田貴司、歸山幸輔とリスニング・イヴェント『松籟夜話』を開催中。

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『解読 レッド・ツェッペリン』出ました!  "Decipher Led Zeppelin" Is Out !
 6月26日に河出書房新社から刊行された『解読 レッド・ツェッペリン』に執筆しました。Jimmy Pageによるリマスター版リリースに合わせた企画ということになりますが、そこは何しろ河添剛/ユリシーズ編ということで、『文藝別冊 デヴィッド・ボウイ』同様、決して一筋縄では行かず、これまでの「通説」に果敢に挑む仕上がりとなっています。

 目次は次の通り。分量的に多いのは彼らの残した全作品に加え、関連作品のレヴューですが、僅かな作品しか残さなかった彼らのために1作ごとにかなりのページを割くとともに、関連作品についてもメンバーの参加作にとどまらず、影響/照応関係を「捏造/妄想的」になることも恐れず探っており、その結果、何と300作品がリストアップされる大規模なものとなっています。
目次_convert_20140629181345


 おそらく私は、今回参加の執筆者の中で、「ZEP度」最低ではないかと。以前に書いたように音楽を本格的に聴き始めたのは1979年で彼らはすでに亡かったし、避けて通ることのできない「古典」として勉強はしたけど、結局プログレの方に行ってしまって、彼らとはすれ違ったように思います。
 全作品ディスク・レヴューを担当した灰野敬二本『捧げる 灰野敬二の世界』に収録されていた灰野とジム・オルークの対談でレッド・ツェッペリンのことが採りあげられていなかったら、今回のリマスター再発のことも別世界のことのように感じていたかも。そこで灰野は『Ⅰ』の切断と実験に溢れた革新性にこだわり、オルークは『聖なる館』から『ブレゼンス』に向けて高められていくサウンドの構築性について熱く語っています。この二人の交差する視線は、その後、改めてZEPの全作品を聴き返し、参考書目を当たる中で、射程距離の長いパースペクティヴを与えてくれました。
 そうしたパースペクティヴの中で、一際大きな屈曲点として浮かび上がってきたのが、ZEPファンにとっては異論の多い問題作『Ⅲ』で、幸運にも(あるいは他に引き受ける書き手がいなかったのか)本作のレヴューを担当できたことは、私にとって望外の喜びでした。それゆえ私の執筆した『Ⅲ』のレヴューは、収録された各曲について語るというより、『Ⅲ』に特徴的に露呈している要素に着目しながら、『Ⅰ』から『プレゼンス』に至る彼らの変遷をとらえる趣向のものとなっています。彼らの音楽/サウンドをかたちづくっている要素/諸力の移り変わりを、それらが刻印された地層が地表近くに露出する『Ⅲ』の地点からボーリングを繰り返し、痕跡を検証し、モデルを構築するというような。
 そのカギとなる概念として持ち出したのが、「アコースティック」です。ZEPにおける「アコースティック」とは何かを、そうした「アコースティック」なものが最も露わに姿を現している本作のうちに、本作で言及されているRoy Harper、あるいはDavy Graham, The Petangle, Steeleye Span等を参照項として探ることを通じて、ZEPをかたちづくる隠された底流を明らかにする試み。
 なので、『Ⅲ』のレヴューは、本書後半に掲載されている関連作300枚のうちのアコースティック・ミュージック群とリンクさせながらお読みいただければと思います。

 ここで少々内幕を明かせば、関連作品のリストアップは当初144枚で、『Friction The Book』、雑誌『ユリシーズ』、『捧げる 灰野敬二の世界』、『文藝別冊 デヴィッド・ボウイの世界』と、このところいっしょにお仕事をさせていただいている編集担当の加藤彰さんから、「ZEPへのジャズからの影響等を考慮して追加すべき作品をリストアップしてほしい」とご要望をいただきました。そこで提出したのが次の21枚のリストです。


Led Zeppelinリストへの追加提案

 まずは「ジャズからの影響」との視点で。
 John Bonhamが影響を受けたと語っている(指摘されている)ジャズ系ドラマー4名Gene Krupa, Buddy Rich, Joe Morello, Max Roachそれぞれの参加作品。彼がドラムは独学であるにもかかわらず、父親のレコード・コレクション等を通じて、ジャズの先達たちからテクニックを学んでいたのは確かなことです。他にはElvin Jones等からの影響も指摘されていますが、きりがないので。
1 Benny Goodman / Carnegie Hall 1938 (1950)
2 Buddy Rich / Rich in London (1972)
3 Dave Brubeck / Time Out (1959)
4 Max Roach / Drums Unlimited (1966)

 続いてはJohn Paul Jonesへの影響が語られているCharles Mingusの作品から。まあ直接的な影響うんぬんは別として、愛聴していたことは確かでしょう、David Bowieの時に挙げた作品とダブらないようにし、またJohn Paul Jonesのオーケストレーション志向を考慮して、比較的大人数のセッション作を選んでみました。
5 Charles Mingus / Mingus at Carnegie Hall (1974)

 Jimmy Pageは難しいですが、Django Reinhardtへの賛辞があるのでとりあえずこれを。映画作品のサウンドトラックというところがミソかと。Robert Plantは思いつきませんでした。女性ヴォーカルに感覚的に共通する作品がありそうな気もしますが。
6 Django Reinhardt / Lacombe Lucien (1973)

 他に同時代的なジャズの潮流として、やはりエレクトリック期のMiles Davisがあるかなと。James BrownやSlyへの回答という点でも、立ち位置に彼らとの共通性があるように思います。『In A Silent Way』はサウンドがあまりにも違うので外し、それでは『Bitches Brew』かとも思ったのですが、聴いてみると滑らかすぎるところがあって、これはやはり『Get Up With It』の黒々とそそり立つ音響のモノリスに、一発はり倒されてもらうしかないかと。他にRoland Kirk等も考えたのですが、改めて聴いてみるとちょっと違うかと。
7 Miles Davis / Get Up With It (1974)

 先ほどElvin Jonesはちょっと‥と書きましたが、というのも、Gene Krupa的なものはElvin Jonesに始まる現代ジャズ・ドラムの主流に継承されていないように思われるからです。むしろ、そうしたものを受け継いだドラマーとして、オランダのフリー・ジャズ奏者Han Benninkを挙げたいところです。
8 The Ex & Guests / Instant (1995)

 次はフォーク、トラッド系。Pentangleの第1作が最重要参照項となるであろうことは、以前にメールで書かせていただいた通りです。それに加えてLed ZeppelinファンのBert Jansch偏重を是正する視点から、John Renbournを採りあげたいと思います。「Black Mountain Side」冒頭のハープのような速いアルペジオにさりげなく添えられたタブラは、まさにJohn Renbourn的なものにほかなりません。そうした要素が明らかなソロ作品9と到達点である異国情緒溢れる桃源郷10は常識的な選盤ですが、最近知った11はThe Pentangle前夜の黒人女性歌手との共演で、PageとPlantの絡みを彷彿とさせるところがあります。
9 John Renbourn / The Lady and the Unicorn (1970)
10 John Renbourn Group / A Maid in Bedlam (1977)
11 Doris Henderson with John Renbourn / Watch the Stars (1967)

 フォーク系からもう1点Steeleye Spanを。彼らの初期の隙間のない重たい構築は、The Pentangleとは別の意味でとてもLed Zeppelin的であると思います。リストを確認したら、すでに『Ten Man Mop..』が挙げられていましたが、『Please to See..』の方が重くて、Led Zeppelinとの関連で挙げるにはよいような気がします。
12 Steeleye Span / Please to See the King (1971)

 プログレ系からも少々。英国系プログレはLed Zeppelinと距離感が近いせいか、挙げたくなるものがないですね。これは逆に英国系プログレから入った私が、Led Zeppelinを素通りした理由かもしれません。なのであくまでLed Zeppelinを照らし出すための補助線ということで。Shadowfaxはアメリカのバンドですが、ここに掲げた作品は彼らの第1作で、その荒々しい稠密さがLed Zeppelin的かと、しかも何と後にこの作品がリミックス及び一部再録音されて、Windam Hillからリリースされるのですが、そちらはハードさが消去されて完璧にニューエイジ風になっているという。もう1枚のKensoは日本のバンドで、リーダーでギター/作曲の清水は大のツェッペリン・ファンです。彼のギターはソロでもニュアンスに頼らない、極めて構築的なもので、そこが(ライヴではなく)レコーディング時のJimmy Page的かなと。
13 Shadowfax / Watercourse Way (1976)
14 Kenso / Sparta (1993)

 エキゾティシズムの導入というか、インドやアラブ、あるいはアフリカ音楽の活用という点では、あまりこれはというものが思い当たりません。これはむしろ先のメールに記したように、Led Zeppelinにとって、そうした要素がどれほど必要不可欠なものだったのか、どうもピンと来ないという理由によるところが大きいです。「Kashmir」を聴いてもさほど血が騒がないとゆーか。リストを確認したら、すでにDon Cherry挙がっていましたが、民族音楽全開のこちらの方がと。
15 Ornette Coleman / Dancing in Your Head (1977)
16 Don Cherry / Organic Music Society (1972)
17 Barney Wilen / Moshi (1972)
18 Brigitte Fontaine / Comme A La Radio (1969)
19 The Sun Ra Archestra / Meets Salah Ragab in Egypt (1983)

 Led Zeppelinのアコースティックな側面について、ECMから次の作品を。ECM独特のサウンド加工により少々薄まっていますが、重く揺るぎない硬質なサウンドが石積みのように構築されていく様は圧巻。Craig Taborn自身「ツェッペリンは古典」とインタヴューで語っています。
20 Craig Taborn Trio / Chants (2013)

 ラストは私らしく(笑)、Derek Baileyで。これピアノレス、ギター入りのクインテットによる演奏で、録音はロンドンのオリンピック・スタジオ。エンジニアは何とEddie Kramerが務めています。
21 Spontaneous Music Ensemble / Karyobin (1968)


 結局、追加提案はそのまま採用され、他にも同様の提案があったのでしょう、リストは最終的に当初の倍以上の300枚に膨れあがりました。関連策レヴューでは、追加提案作品を中心に、30作品ほど担当しています(追加提案した中で執筆を担当できなかった作品もあります)。
 関連作品レヴューの中には、幾つか「流した」感じの原稿も見受けられ、それがアコースティック系の重要作品だったりすると、「だったら書かせてくれればいいのに」と思ったりしますが、まあそれはそれそういうことで。
 執筆者としてはRecord Shop "Reconquista"店主の清水久靖さんがいいですね。お店でも民族音楽系の現地録音等をよく採りあげていますが、黄金期ブリティッシュ・ロックという閉ざされた世界の中に引きこもるのではなく、そうした開かれた景色を日常的にとらえている瞳からの眺めという清々しさを感じます。逆に言うと、1968年、スウィンギング・ロンドン、ポスト・ビートルズ、シド・バレットのピンク・フロイド‥‥という視点/文脈から語られるレッド・ツェッペリンに、あまり可能性を感じないということでもあるのですが。
 ともあれ、ぜひ書店で手に取ってみてください。


ユリシーズ編『解読 レッド・ツェッペリン』河出書房新社 2160円(本体2000円)
表紙
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執筆活動 | 18:18:42 | トラックバック(0) | コメント(0)
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