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福島恵一

Author:福島恵一
プログレを振り出しにフリー・ミュージック、現代音楽、トラッド、古楽、民族音楽など辺境を探求。「アヴァン・ミュージック・ガイド」、「プログレのパースペクティヴ」、「200CDプログレッシヴ・ロック」、「捧げる-灰野敬二の世界」等に執筆。2010年3~6月に音盤レクチャー「耳の枠はずし」(5回)を開催。2014年11月から津田貴司、歸山幸輔とリスニング・イヴェント『松籟夜話』を開催中。

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『松籟夜話』第二夜来場御礼  Thank You for Coming to Listening Event "Night Stories As Pine Tree Leaves Rustling in the Wind" The Second Night
 冷え込み厳しい中にもかかわらず、2月1日(日)開催の『松籟夜話』第二夜においでいただいた皆様、ご来場どうもありがとうございました。皆様の暖かく、また鋭い耳の眼差しのおかげで、何とか無事終了することができました。前回のミッシェル・ドネダとは異なり、これまで人前でかけたことのない音源ばかりでしたし、何より本番前のリハーサルで!QUARTZ001をかけたら、ギャラリー白線のスピーカーとの奇跡的な相性の良さで、まさに魔術的にその場の空間が息づく様にすっかり打ちのめされてしまい、私自身が話し手というよりは、むしろ聴き手として、お客様を差し置いて楽しんでしまった一夜でした。
 それゆえ、どんなことをお話ししたかあまりよく覚えておらず、Facebook掲載の原田正夫さんのレポートを読んで、ああそう言えばこんなお話をしたなあ、そうだそうだ‥と、「当時」を反芻しながら喜んでいる次第です。
 そんなわけで、当日の詳しいレポートなどはとてもできる状態になく、せめて‥ということで、当日のプレイリストを掲載させていただきます。各盤のコメントは基本的には選盤者が執筆していますが、津田のコメントに福島が加筆したりと入り混じっております。まあ、これは当日もそんな風だったからいいか‥と。また、コメントの内容も簡単な紹介から、当日の展開の一部を反映したものまで様々です。
 それではどうぞお楽しみください。


クォーツ追加1Solomon Islands - 'ARE'ARE Panpipe Ensembles
Le Chante du Monde
 開場〜本編開始まで流していたもの。おそらく竹のパンパイプの、しっかり構築されたアンサンブル。





クォーツ追加2Voices of the Rainforest - BOSAVI, PAPUA NEW GUINIA
360°productions
 イントロダクションとして。一日の時間軸による生活音の変化という時間軸で構成された CDの、冒頭の夜明け〜人の気配が現れるまでの部分。Grateful DeadのMicky Hartによるプロデュース。Steven Feldによるフィールドレコーディング。


Sacred Flute Music from New Guinea : Madang
!QUARTZ 001
 クォーツ・レーベル発足のきっかけとなったニューギニア現地録音。ここでの二本の竹の笛の関係は、冒頭に流れていたソロモン諸島のパンパイプ演奏と異なり、時間と空間を仕切ってマッピングすることにより生み出されるアンサンブルではない。息を合わせ、倍音をぶつけ合わせ、響きを聴き取る中から、二人の演奏者の間だけの交通ではなく、周囲の環境の響きを含めた「息づき」が生み出されてくる。ギャラリー白線のスピーカーは、その様を生々しく浮き上がらせてくれた。


Windim Mambu Sacred Flute Music from New Guinea : Madang vol.2
!QUARTZ 002
 「ニューギニアの魔法の笛」続編。Steven Feldの録音がまずジャングルの奥深い空間を透明に提示し、そこに人間による物音が現れるのに対し、ここで世界は笛の音の息づきを通して浮かんでくる。全身がすっかり呼吸器と化してしまい、透明になった皮膚の向こうに、合唱がもやのようにたなびき、虫の音が映り込む。


David Toop, Paul Burwell / Wounds
!QUARTZ 003
 デヴィッド・トゥープと彼がロンドンのライヴハウス「ラウンドハウス」でバイトしていた頃からの盟友であるポール・バーウェルのデュオ。ステージ上で打楽器がなぎ倒され、甲高い笛の音が鳴り続け、不定形のノイズ流が噴き出す。ここで音は決して対象化されることなく、演奏者の身体の一部であり、また音が解き放たれる空間の一部でもある。身体の中に尻尾を残した音。「ある空間・時間の中で起こるすべてを(音楽/演奏として)聴く」仕方。


Max Eastley, Steve Bersford, Paul Burwell, David Toop / Whirled Music
!QUARTZ 005
 マックス・イーストリー制作のブルローラーを、防具を着けて力の限りぶん回す過激な演奏。様々な周期の旋回音がずれながら重なり合い、揺れ動く響きの流れをつくりだしていく。その周期はほぼ回転半径によって決まる。「魔法の笛」の共鳴や倍音のように。床の木目や壁紙の凹凸に紙を押し当てて鉛筆でこすり、眼ではとらえられない文様を浮かび上がらせるマックス・エルンストのフロッタージュ。それを音/響きに対して行うとしたら。トゥープがかつて体験した、ステージの準備作業のようにしか見えないAMMの演奏と先のニューギニアの笛の音楽をつなぐもの。


クォーツ追加3Tatsuya Nakatani, Michel Doneda / White Stone Black Lamp
nakatani-kobo kobo-1
 クォーツにおけるトゥープの意志を継ぐ「魂の同志」を探せば、やはりミッシェル・ドネダの名前が挙がる。中心軸を貫くドネダの息音のまわりを、複層的な軌道を描きながら旋回する打楽器の響き。息音を奏する時のドネダと対等に向かい合える演奏者は極めて少ないが、中谷達也は確実にその一人として挙げられよう。


クォーツ追加4歌女(Kajo) / 盲声(Blind Voices)
blowbass blowbass-003
 同じく「魂の同志」としてチューバ吹き高岡大祐たちの演奏を。藤巻鉄郎と石原雄治の二人が打ち出す音はするすると流れ出し、泡立ち渦を巻き、分流し合流し、地下へと沁み込み、また地表へと滲み出して滔々と流れ行く。チューバはハウリングやモジュレーションとしか思えない響きでそれと一体になっている。最後のマイクロフォンが部屋の外に出て、大崎のストリートを歩くプロセスも、演劇的効果やギミックとしてではなく、「ある空間・時間の中で起こるすべてを(音楽/演奏として)聴く」仕方の具現化ととらえたい。いま最も注目すべき演奏者の一人。


クォーツ追加5David Toop, Max Eastley / New and Rediscovered Musical Instruments
Obscure obscure no.4
Max Eastley "Hydrophone"
David Toop "Do the Bathosphere"
前者イーストリーの創作楽器「ハイドロフォン」はその名の通り、流れに沈めた管から上にハープのように弦を張ったもの。せせらぎの水音からセイレーンの歌声にも似た不可思議な心霊現象的響きがたちのぼる。後者はお風呂の鼻歌のようなデヴィッド・トゥープの歌。本当にただの鼻歌なのかと思わされるが,後半に唐突にコーラスが入る。だがこの音像もまた風呂場で録音したかのようなくぐもったもの。


クォーツ追加6The Flying Lizards / The Flying Lizards
Virgin
段ボール箱をドラム代わりに叩きながら素人が唄った「Summertime Blues」ということで知られるが、エンディングに,配水管だかダクトだかを介して聴こえてくるようなパートがある。ギャヴィン・ブライアーズ&マイケル・ナイマン → ブライアン・イーノ&デヴィッド・トゥープ → デヴィッド・カニンガムという世代を超えた眼差しの受け渡しにも注目。


クォーツ追加7Various Artists / Silence - A Quiet Manifestation of the Future
Wacoal Art Center 36CD-N020
David Cunningham "The Listening Room"
 フライング・リザーズのデヴィッド・カニンガムは、後にサウンドアーティストとして活動することになる。残響音の長いガラス張りの吹き抜けの部屋に仕込んだマイクとフィードバック装置のインスタレーションを「演奏」したもの。カニンガムの「部屋の鳴り」を発見して楽しむという志向性が浮き彫りとなる。外の自動車の走行音が増幅/放出され、本体がカットされて部屋に残る響きのたゆたいが、また別の漂う色合いを生み出す。


クォーツ追加8:zoviet - france: / Shouting at the Ground
Red Rhino REDLP91
 今回のもうひとつの目玉として用意したzoviet - france。民族音楽のテープコラージュによると思われるトラックをいくつか。呪術的で物質的な音のテクスチャーは、電子的な装置を介して、我彼を結びつける「古さ」への地質学的想像を掻き立てる。!QUARTZレーベルのものとも通じる辺境への彷徨。発表当時は「ノイズ」とひとくくりにされていた中に潜む豊穣さ。


クォーツ追加9Akio Suzuki / Na - Gi 1997
Edition RZ Ed. RZ 10005
 潮騒の上を伸びやかに飛翔する石笛の音色。「濃い」音源を聴いたあとではいささか物足りないくらい整然とした音風景。洗練されている分、侘び寂びなどの日本的情緒として安易な解釈をされてしまいそう。周囲を入れた「引きの画」を撮ればフィールドレコーディングになるというのはマチガイで、サウンドスケープは音の絵はがき/名所絵に陥りやすいことがわかる。


クォーツ追加10藤田陽介 / ヒビナリ
Otototori OTOT-0613
瞳孔の開き切った「野生化した耳」を沈静化し、「あの世」から現世に戻り安全に家路に着くためのアウトロとして。ひなびたフィールドレコーディングと自作パイプオルガンの演奏を毎日5時の時報代わりに流す、というアートプロジェクトの記録。ここで音は陽だまりのようにやさしく傍らに寄り添ってくれている。日常の中に潜む貴重なやさしさに気づく体験。


参考音盤
ジャケットを示して説明したり、終了後にプレイした音源。

クォーツ追加11Yasuhiro Morinaga / Archival Sound Series : Ludwig Koch
Concrete 001
 1930年代ドイツから英国に亡命し、BBCでフィールドレコーディング等に関するラジオ番組を担当。金子智太郎がトゥープから直接聞いた話によれば、彼はルドヴィッヒ・コッホの番組に投稿したことがあるという。単にサウンド・アーカイヴを整備したというだけでなく、録音により世界をとらえる情熱を伝えた重要人物。


クォーツ追加12Max Eastley / Installation Recordings (1973 - 2008)
Paradigm Discs PD 26
 イーストリーはその後もっぱらサウンド・インスタレーションの制作に勤しむ。音を放つだけでなく、不可思議な空間を生成する仕掛けの数々。




Hekura Yanomamo Shamanism from Southern Venezuela
!QUARTZ 004
 ヤノマミ族のシャーマンによる儀式の録音。複数の事態が同時進行するドキュメント。





クォーツ追加14_convert_20150207230459 クォーツ追加15_convert_20150207230530
クォーツ追加13_convert_20150207232610
当日の様子の写真は、原田正夫さんのFacebookページから転載させていただきました。
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ライヴ/イヴェント・レヴュー | 23:58:14 | トラックバック(0) | コメント(0)
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