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福島恵一

Author:福島恵一
プログレを振り出しにフリー・ミュージック、現代音楽、トラッド、古楽、民族音楽など辺境を探求。「アヴァン・ミュージック・ガイド」、「プログレのパースペクティヴ」、「200CDプログレッシヴ・ロック」、「捧げる-灰野敬二の世界」等に執筆。2010年3~6月に音盤レクチャー「耳の枠はずし」(5回)を開催。2014年11月から津田貴司、歸山幸輔とリスニング・イヴェント『松籟夜話』を開催中。

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ECMベスト20×2
 本来は閉店日の月光茶房に、原田さん、多田さんと集まって打合せをしている時に、以前からアイデアとして出ていた「各自がECMベスト20を2種類選び、カフェ当日、来場者に配布する」という計画が本決まりになりました。
実際に聴いているECM作品の数がお二人に比べ圧倒的に少ない私は、原田さんからNew Seriesを中心に10枚ほどお借りしたりして、ようやく仕上げたのが、今回掲載のECMベスト20×2です。なお、原田さんはさらに10枚上乗せしてECMベスト50を選び、一方、多田さんは規定のベスト20×2に加えて、ECMベスト202を選ぶという快挙(暴挙かも)をかましてきました。や・やるな‥。

 6月6日のECMカフェではブレイリストのほかに、これらのECMベスト、さらにはもはや貴重な「musee」のECM特集号3冊セットなど、おみやげが盛りだくさんでした。
 原田さんのECMベスト50は原田さんのブログで、多田さんのECMベスト20×2は多田さんのブログで、それぞれ見られます。左のリンクからどうぞ。
 原田さんのは、コンプリート・コレクターらしく、全体をバランスよく見渡したうえで、お客様の好みも踏まえて選んだ、いわばテーラーメイド・ベスト。カフェのマスターとして大人の余裕を感じさせる選盤です。対して多田さんのは、ジャズでも、現代音楽でも、フリー・インプロでも、トラッド/エスニックでもないECM独自のカラーを打ち出した「ECMの中のECM」ベスト20と「ジャズ耳」で選んだベスト20の二本立てとなっています。

 ちなみに私のはC.D.フリードリヒからマーク・ロスコへの北方ロマン主義(ドイツ・ロマン派もここに含まれます)の流れを念頭に置いて選んだ、メランコリックに北へと向かう20枚と、プログレDNAなサウンド配置によりアブストラクトな強度をはらんだ20枚(むしろ英国的かも)ですー。


ECM-北方ロマン主義な名盤20枚【福島選】

1032 Ralph Towner / Diary
低く垂れ込め凍てついた「北」の空/海に向けて放たれた馨しいメランコリー。
1060 Ralph Towner / Solstice
中空に広げられた幾つもの色の帯が、次第ににじみ、溶け合って、ひとつになる。
1075 Jan Garbarek/Bobo Stenson Quartet / Dansere
  枯葉のように砕けやすいサウンドを踏みしめる、うつむいた、だが強靭な眼差し。
1077 Edward Vesala / Nan Madol
寄せては返す太古の混沌からの絶え間ない生成。「うた」のかたちの芽吹き。
1083 Terje Rypdal / After the Rain
この透き通った繊細な慈しみは、果たして人類に向けられたものなのだろうか。
1198 Steve Eliovson / Dawn Dance
何人にもただ一度限りしか許されない瑞々しくもはかないアドレッセンスの輝き。
1251 Dino Saluzzi / Kultrum
おぼろな夢の底をまさぐる声と打撃。荒れ果てた世界の彼方に響くバンドネオン。
1264 Alfred Harth / This Earth !
死の淵へと吸い寄せられるように鏡の中に降りていくポール・ブレイのピアノ。
1320 Pau Bley / Fragments
暗がりへ、静けさへ、自らの精神の深みへとゆっくりと歩みを進めていく者たち。
1325 Arvo Part / Arbos
のびやかな声/たなびく弦がゆるゆると枝を伸ばし、天蓋に沿って弧を描く。
1384 Stephan Micus / The Music of Stones
ほの暗く重くしめやかな聖なる空間それ自体の息づき/鼓動/体温が触れてくる。
1399 Meredith Monk / Book of Days
モノクローム世界で互いの肩に手を置き、触れあい、睦みあう声の肌触り。
1426 Paul Giger / Alpstein
碧天にくっきりと鋭利な北の稜線が浮かび、張り詰めた音が幾重にもこだまする。
1446 Tamia,Pierre Favre / Solitudes
匂うようにたちのぼる声が描き出す、夜空にかかる虹のようにありえない光景。
1610 Lena Willemark,Ale Moller / Agram
しんしんと降り積もる静寂の重みを、切り裂き突き破る声/打撃の呪術的強度。
1669 Giya Kancheli / Magnum Ignotum
地の底深く降りていく弦の響きと大地から立ちのぼる声(グルジア正教の詠唱)。
1692 Eleni Karaindrou / Eternity and a Day
冷たく降り積もる時間と引き延ばされ重くのしかかる雪による孤独な北の情景。
1774 Bach/Webern / Ricercar
色合いを変えながら受け渡される響き。発芽による原植物のメタモルフォーゼ。
2057 Savina Yannatou / Songs of an Other
張り詰めた音の綱の上で、薄く滑らかな声の刃が静かに空間を切り裂いていく。
2070 Eleni Karaindrou / Dust of Time
「南国」に降る雪と吹きすさぶ寒風に向かい、かじかむ指先を暖める音の灯火。



ECM-プログレDNAな名盤20枚【福島選】

1004 Marion Brown / Afternoon of a Georgia Faun
暗闇の中、手探りで(響くか/響かないか)繰り広げられる音響触覚実験。
1005 Music Improvisation Company / Music Improvisation Company
Jamie Muirの参加ゆえか「太陽と戦慄」期クリムゾン的交感が随所に聴かれる。
1136 Egberto Gismonti / Solo
音を思い描く意識の速度を超えて、弦の震えをそのまま空間に刻みつけるわざ。
1179 Bengt Berger / Bitter Funeral Beer
現地録音の不思議なアンビエント感に溶け込んでいくサイクリックな運動の高揚。
1187 Rainer Bruninghaus / Freigeweht
車窓に映る街の灯を眺めるうち、いつの間にか空高く飛翔している音の眺め。
1190 Pat Metheny&Lyle Mays / As Falls Wichita,So Falls Wichita Falls
幾つかの場面だけ妙にはっきり覚えているいつか見た夢(いつだったか)。
1336 Meredith Monk / Do You Be
引き締まった声の身体を持つアスリートたちの一糸乱れぬコリオグラフィ。
1350 The Bill Frisell Band / Lookout for Hope
伝説の来日公演メンバーによるECM最終作。「アメリカ」に浸りこまない。
1451 Barre Philips / Aquarian Rain
コントラバスの弦の幾何学的ダンスを彩り、空間をたわませるテープと打楽器。
1490 Heiner Goebbels / Shadow/Landscape with Argonauts
街行く人々のつぶやきからバスのエンジン音まで音響部品の精密極まりない構築。
1524 Sidsel Endresen / Exile
ダグマー・クラウゼを思わせる硬質な声の輪郭と深々とした旋律の拮抗。
1525 Jan Garbarek,The Hilliard Ensemble / Officium
ガルバレクの走らせる筆の跡により、完璧な建築/天上の調べが地に舞い降りる。
1543 Italian Instabile Orchestra / Skies of Europe
イタリアではフリー・ジャズだってこんなにもメロディアス。カンタービレ!
1588 Louis Sclavis Sextet / Les Violences de Rameau
加速/増殖した細部が組織を食い破り輪郭をかき乱す。遺伝子組換18世紀歌劇。
1643 Maya Homburger,Barry Guy / Ceremony
コントラバスのひと弓に圧縮されて映し出される全方位の移りゆく景色。
1678 Joe Maneri,Barre Phillips,Mat Maneri / Tales of Rohnlief
意識のはるか下方にうごめく未加工の音響のたゆたい/音の生まれ出る現場。
1735 Luciao Berio,Kim Kashkashian / Voci
飛翔するヴィオラとだみ声の民俗ヴォーカルの絡みはオザンナの熱さを思わせる。
1852 Evan Parker Electro-Acoustic Ensemble / Memory/Vision
眼に見えぬ力が地を這い空を飛び四方八方から襲い掛かり渦を巻く集合的音響。
2042 Jon Balke,Amina Alaoui / Siwan
異なる文化の安易な「融合」ではなく、優美で精妙なモザイクによる力の均衡。
2086 Arve Henriksen / Cartography
ジャスミン(東洋への遠い憧れ)のつんと香る霧深い森のしめやかな空気。



Meredith Monk / Book of Days (ECM 1399)
少女の視線に射抜かれて流れを止める時間。
声の身体が折り重なるしめやかな空間。
ゆったりした衣服の襞やそこから香り立つ肌の匂いの響き。



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レクチャー関連 | 20:26:00 | トラックバック(0) | コメント(0)
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