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福島恵一

Author:福島恵一
プログレを振り出しにフリー・ミュージック、現代音楽、トラッド、古楽、民族音楽など辺境を探求。「アヴァン・ミュージック・ガイド」、「プログレのパースペクティヴ」、「200CDプログレッシヴ・ロック」、「捧げる-灰野敬二の世界」等に執筆。2010年3~6月に音盤レクチャー「耳の枠はずし」(5回)を開催。2014年11月から津田貴司、歸山幸輔とリスニング・イヴェント『松籟夜話』を開催中。

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書棚の上のコリンダ@京都河原町丸太町  "Kolinda" on the top of bookshelf @ Kawara-machi Maruta-machi, Kyoto
 11月2日から4日まで京都に行っていた。もともとはKYOTO EXPERIMENT 2016 AUTUMNの一環として開催される池田亮司のコンサート『Ryoji Ikeda:concert pieces』(*1)及びインスタレーション『the rador [kyoto]』(*2)を観ることを目的に計画した旅だった。コンサートについては、何よりもformula [ver.2.3] / C⁴I / datamatics / matrixの4作品を、池田自身のお墨付きによるオーディオ・ヴィジュアル規格で体験できることに魅力を感じていた。すなわち、重低音から高周波に至る極端に幅広い周波数スペクトルを、ホールの巨大なPAから浴びる体験が、自宅のスピーカーでCDを聴くのとは異なる聴取を与えてくれるのではないかと。もちろんそれにさらに映像がプラスされた体験であることも。
 結論を言えば、そこに意外性に満ちた新たな発見はなかった。それは確かに高水準に突き詰められた構築であり、その尖った純度においても、噴出する暴力性においても、池田亮司以降に制作された凡百のエレクトロニック・ミュージックを簡単に蹴散らすものにほかならなかった。しかし、『+/-』をはじめとする作品群からすでに聴き取っていた認識を刷新するものではなかった。むしろ映像が加えられることによって、決して作品体験が深化するわけではないことの方が発見だったかもしれない。抽象的な文字/記号列のつくりだす、一見余剰を徹底的に削ぎ落としたウルトラ・クールな映像は、実のところ、音響の過剰をわかりやすく視覚のパターンにはめ込み、「図解/絵解き」してしまう。そこに限界を感じたのか、その後、映像はニュース映像等の断片のコラージュへと向かうのだが、こちらは少なくとも視覚レヴェルでは既視感を乗り越えられない。むしろ池田作品には似つかわしくない焦燥感や苛立ちばかりが画面から響いてくる。
*1 http://rohmtheatrekyoto.jp/program/4284/
*2 http://rohmtheatrekyoto.jp/program/4286/


 3日の15時から22時まで4つのコンサートを聴き、翌日はあらかじめ調べておいた幾つかの店舗を回った。いつも通販で利用しており、『松籟夜話』のフライヤー配布にもご協力をいただいている、魅力溢れる品揃えのレコード店Meditationsに挨拶にうかがう前に、午前10時から開いている近くの新刊書店「誠光社」(※)を訪れた。
※http://www.seikosha-books.com/

この「誠光社」は、英国『ガーディアン』紙が選ぶ世界の書店10選にも挙げられた京都の有名書店「恵文社 一乗寺店」で店長を務めた堀部篤史氏が独立し、新たに開かれた書店だ。作り付けの白木の書棚が並ぶレイアウトも素敵だが、やはり何と言っても選書が素晴らしい。「書棚を読む」楽しさを与えてくれる。書物を選び並べること自体が、知のネットワークを構築することであるのがよくわかる。これぞと狙いを定めた本を出版社に直接注文して取り寄せているのだろう。見かけたことのない本もたくさんある。未知の鉱脈が覗いている‥‥という感じ。

一通り書棚を回り(スペースはさほど広くないが、その分濃密で、一冊ごと書背に眼が止まってしまうので、意外と時間がかかる)、気になる本を3冊ほど抜いてレジへ向かおうとして、書棚の上にレコード・ジャケットが飾ってあるのに気が付く。へぇと見回すと、何とコリンダ(Kolinda)の第1作のジャケットが並べられているではないか(驚)。
以前にブログでも触れたことがあるが(※)、コリンダこそはマリコルヌ(Malicorne)の開いたトラッド・ミュージックへの扉を、さらに大きく開け放ったばかりか、その向こうからぐいっと腕を伸ばして、まだ何も知らなかった当時の私をトラッドの泥沼に引きずり込んだ張本人である。
※http://miminowakuhazushi.blog.fc2.com/blog-entry-114.html
http://miminowakuhazushi.blog.fc2.com/blog-entry-113.html

コリンダ1-1縮小 コリンダ1-2縮小
              表面                            裏面

 その世界では有名と言いながらも、何せフランスのトラッド専門のマイナー・レーベルHexagoneからリリースされたハンガリーの演奏グループの盤。そこら辺にごろごろ転がっているものではない。それがなぜここに‥‥と興味を惹かれた私は、レジでの精算時に店主に尋ねずにはいられなかった。その答は意外なものだった。
 「うちの店のお客さんにも人気のロベール・クートラスというフランスの画家がいて、彼の作品集も並べているんですが、この作品のジャケット・デザインがそのクートラスなんですよ」。「ええっ、クートラスって、あの小さなカードみたいなの描いてる、最近、日本で個展も開かれた‥‥」。「ええ、そうです。ご存知なんですか」。
 頭の中で一瞬火花が閃いた。ロベール・クートラス(Robert Coutelas)については、Facebook経由で個展の情報が流れてきて、その慎ましい、だが綺想に満ちた画風に興味を惹かれたが、会期中に松濤美術館を訪れることができず、残念に思っていた。だが、その名前や視覚イメージが、私の中でコリンダと結びつくことはなかった。
https://www.discogs.com/ja/Kolinda-Kolinda/release/1824450
http://robert-coutelas.com/jp/information/

 Hexagoneに遺されたコリンダの作品は計3枚(*)。ご覧のようにデザインにあまり一貫性はない。強いて言えば民俗色の濃い表現となろうか。2枚目はいささかダサい。私は中世写本かタピストリーを思わせる3枚目のデザインが好きだった。1枚目はアンティークの陶器の絵柄か何かからコラージュしたデザインかと思っていたので。だが、それがクートラスの描くカルトを並べたものだと知ると、何だか無性に愛おしくなる。それはこれまで決して交わることのなかった二つの線を結びあわせてくれた、旅先でこそ開かれ得る新たな窓への感謝でもあるだろう。しかし、「誠光社」スゴイな。前日、コンサート会場周辺をうろつく途中で、ふと前を通りかかり、「タルト・タタン始めました」の案内に惹かれて飛び込んだ「リンデンバーム」(☆)も良かったなあ。タルト・タタンが良かったので、翌日は改めてシャルキュトリーや野菜のマリネ等を購入。レヴェルの高さに驚く。京都はやっぱり深い。
*https://www.discogs.com/artist/818759-Kolinda
☆htp://www.linden-baum.jp/index.html

コリンダ2縮小 コリンダ3縮小


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アート | 13:48:07 | トラックバック(0) | コメント(0)
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