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福島恵一

Author:福島恵一
プログレを振り出しにフリー・ミュージック、現代音楽、トラッド、古楽、民族音楽など辺境を探求。「アヴァン・ミュージック・ガイド」、「プログレのパースペクティヴ」、「200CDプログレッシヴ・ロック」、「捧げる-灰野敬二の世界」等に執筆。2010年3~6月に音盤レクチャー「耳の枠はずし」(5回)を開催。2014年11月から津田貴司、歸山幸輔とリスニング・イヴェント『松籟夜話』を開催中。

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ECM-出会いの交点
多田雅範と堀内宏公の運営する音楽サイトmusicircus内にECMカタログ完成記念企画として、二人の選んだ「偏愛ECMベスト11」が掲載された。「ECM Catalog」の主要な執筆者である二人が数多いECM作品の中からどの作品を選んだかももちろん興味深いが、読んでみてむしろ驚かされるのは、それらが幾つもの出会いの瞬間に満ち溢れていることである。
多田によるECM 1545 Ketil Bjornstad / The Seaのレヴューなど、ビョルンスタがムンク研究家として来日講演することを聞きつけた彼の奔走が、たちまちのうちにノルウェー大使館でのミニ・コンサートを実現し、勢いあまって女性大使とビョルンスタを引きつれ駆け抜けてしまう(慌てる大使館日本人スタッフ)という、ほとんどバスター・キートンばりの速度に、「ジャズ・ライフ」誌のレヴュー、ディスク・ユニオン新宿店の喧騒、小野好恵の散骨の情景等がフラッシュバックする。まるでジョナス・メカスの個人映画の如く。「記憶」の各章のページが素早くめくられるように(Each Chapter Memorized)。

一方、堀内は自らが作品を選び、それにしかるべき位置づけを与えることが、「音楽を聴く際に特権的に許されている思いがけない発見や予測できない不安定な状態といったもの-明確に定義できない曖昧で開かれた体験の種子を抱えた状態にできるだけ長く留まり、自らの力で参照点を見つけ、進む道を探し出そうと試みること」を奪ってしまうのではないかと怖れながら、それが補助線/目印として、聴き手一人ひとりが「別の何か」に変化していく手助けとなる可能性に慎重に賭けている。それゆえ彼は「ECM Catalog」で執筆を担当した作品をあえて除外し(それは「権威づけ」を注意深く遠ざけることとなる)、採りあげた作品を明確な輪郭の中に閉じ込める代わりに、幾つかの「必然」と「偶然」の線の織物へとほどいてみせる。はかなげに明滅する魅惑的な謎の群れ(Ephemeral Calm Mysteries)。

「偏愛」といういささか自嘲的な言葉が、ここでは我が物顔に世間を流通する「独断と偏見」を離れ、気負いのないすがすがしさをたたえているのは、これらの作品が、彼らとともに様々な瞬間を経てきたからだろう。「批評とは作品をダシに自分を語ることだ」というのは間違いで、単に「批評通して自分が透けて見えてしまうのを避けることはできない」というだけのことだ。だからこそ、作品といかに向き合うかが問われ、また、その向き合い方が厳しくも喜びに満ちた瞬間をどのように乗り越えてきたかが問われることになる(Every Critical Moments)。

二人が共にECM 1220 Mike Nock / Ondas(=Waves)を選び、Ketil Bjornstad / The Seaに揃って触れているのも興味深い。波々が十重二十重に折り重なり、想いを深めながら、ふうわりと柔らかな永遠へと向かうように。Eternity / Coda / Mercy

http://homepage3.nifty.com/musicircus/ecm/e_hl/004.htm



ECM 1545
Ketil Bjornstad, David Darling, Terje Rypdal, Jon Christensen / The Sea

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批評/レヴューについて | 23:40:55 | トラックバック(0) | コメント(0)
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