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福島恵一

Author:福島恵一
プログレを振り出しにフリー・ミュージック、現代音楽、トラッド、古楽、民族音楽など辺境を探求。「アヴァン・ミュージック・ガイド」、「プログレのパースペクティヴ」、「200CDプログレッシヴ・ロック」、「捧げる-灰野敬二の世界」等に執筆。2010年3~6月に音盤レクチャー「耳の枠はずし」(5回)を開催。2014年11月から津田貴司、歸山幸輔とリスニング・イヴェント『松籟夜話』を開催中。

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『松籟夜話』第九夜来場御礼  Thank You for Coming to "Syorai Yawa" the Ninth Night
 6月11日(日)開催の『松籟夜話』第九夜「音響都市の生成」、多くの方にご来場いただき、ありがとうございました。「都市」がテーマということで、もっとライトな仕上がりになるかとも思っていたのですが、結局はいつも通り掘り下げに掘り下げて、ハードコアかつディーブ極まりない内容に成り果てました(笑)。特に後半のクライマックスの連続は、これまでの中でも出色の展開ではなかったかと思います。
 ここでは、当日ご紹介した音源をリストアップし、コメントを添えます。コメントは当日のままではなく、また企画の性格上、当然のことながら、プログラムの流れの中に位置づけての説明となっておりますので、その作品の全体像をニュートラルに伝えるものではありません。なお、試聴トラックはあくまで雰囲気を感じ取っていただくためのもので、必ずしも当日プレイしたトラックと同一ではないことにご注意ください。

蠖捺律・神convert_20170616173057
撮影:原田正夫


開演前BGM

V.A.『エチオピアの音楽』tr.11「エチオピアの教会音楽」
試聴トラック:https://www.amazon.co.jp/%E3%82%A8%E3%83%81%E3%82%AA%E3%83%94%E3%82%A2%E3%81%AE%E9%9F%B3%E6%A5%BD-%E6%B0%91%E6%97%8F%E9%9F%B3%E6%A5%BD/dp/B0017GSGHK
 エチオピアのコプト教会聖歌。前回の「聖なる場所に集う声」でご紹介したOcora音源とはかなり音の手触りが異なり、ゆったりとした御詠歌調。重なり合うレイヤーが揺らぐ様が今回紹介する音源と共通する耳の視点を要求する一方で、カテゴリー的には前回企画とつながっていることから、ブリッジ役を務めてもらった。


開幕

Colette Magny『Vietnam 67 / Mai 68』tr.13
試聴トラック:https://www.youtube.com/watch?v=CdGVMsoivhg
 聴覚による都市イメージを探るにあたり、「音の絵葉書」的なかっちりした枠組みに到底収まらない溶解/流動状態の都市音響を「最初の一撃」として。タイトル通り、パリ「五月革命」の街頭実況録音を含む。飛び交う怒号、沸騰するパロール、ただならぬ気配の中、「インターナショナル」の決して勇ましくはない歌声が流れる。

蠖捺律・農convert_20170616173126
撮影:益子博之



第1部 スナップショットが浮かび上がらせる都市像

 都市が大規模化・多様化し、一望の下にはとらえきれなくなったことを前提に(「見えない都市」)、スナップショットによる一瞥の断片の集積が浮かび上がらせる光景に耳を澄ます。もちろんそれは一部に過ぎず、「群盲、象を撫でる」が如く、決して全体像には行き着かない試みであるのだが。

Christina Kubisch&Eckehard Guther『Mosaique Mosaic』tr.1~2
試聴トラック:http://www.gruenrekorder.de/?page_id=10742
カメルーンで現地学生に教えてもらった「音が面白い場所」のサウンド・スナップショットによる構成。がやがやと埃っぽい市街の喧噪、下世話な生活感が溢れる。怒鳴り合う(?)声の応酬と、日向ぼっこする猫のように脱力しきった街角の讃美歌。拡声器やラジオの電気的歪みが最初から風景の一部として瀰漫している。レム・コールハース「ジェネリック・シティ」の猥雑な強度。洗練されたハイ・アート作家のイメージが強かったKubischによる思いっきり生々しい達成。

Craig Shepard『On Foot:Brooklyn』tr.1
試聴トラック:https://craigshepard.bandcamp.com/album/on-foot-brooklyn
タイトル通り、ブルックリン地区内をあちこち徒歩で巡りながらの街頭演奏録音集。なかなか始まらない演奏に向けてそば立てられる耳が、「何もない」街角の景色を思わず映し出してしまう。後から添えられるクラリネットの細い線も、「食いだおれ人形」みたいなドラムも、そうして成立した都市の聴覚イメージを、ふっと浮かび上がらせるものとして機能する。

近藤譲『ブルームフィールド氏の間化』B-1「夏の日々」
試聴音源なし
 コンサート終了後の拍手から始まる、彼には珍しいテープ・コラージュ作品から、目線の高さを飛行するクラリネット(前掲トラックからの連続性)に導かれて路地に入り込み、降り注ぐ蝉時雨の下に佇んで、子どもたちの言葉遊びを見守る部分を抜粋。穏やかな慈愛に満ちた、しかしノスタルジックでしかあり得ない耳の視点。

Carl Stone『Kamiya Bar』tr.4+tr.5
試聴トラック:http://www.allmusic.com/album/kamiya-bar-mw0000892540
 対して同じ「街角の声」(日本語)に着目しながら、「社会鍋」の呼びかけや市場の売り立ての連呼を採りあげるカール・ストーンの手つきは「クール」そのものだ。日本語を解するにもかかわらず、あえて意味にとらわれず、サウンドのフェティシズムに溺れる彼は、そのポップ&キッチュな耳の鋭さによって、凡百のエキゾティシズムを軽々と乗り越える。フィールドレコーディング音源によるセッションにおいても、彼の「空気を読まないこと」が微温湯的な閉域を切り裂く場面を何度も目撃した。

AMEPHONE『Retrospective』tr.2
試聴トラック:https://amephone.bandcamp.com/
 前々回特集したAMEPHONEから。駅まで近道をしようとして、不案内な住宅街に迷い込み、あたりを見回した瞬間、どこかの家の開け放たれた窓からふと聴こえてきそうな弦アンサンブルの音が、テープ速度の操作で歪み、すっと音もなく崩れ落ちる。何気ない日常の中で足元が揺らぎ、見慣れたはずのものが見知らぬ何物かに変貌する。

蠖捺律・胆convert_20170616173145 蠖捺律・点convert_20170616173201
撮影:原田正夫


第2部 俯瞰と転送 ― 都市空間における身体の位相

 先に見たスナップショットの集積に対し、俯瞰による眺め、あるいは聴き手を一瞬のうちに包み込む響き(J.J.ギブソン「包囲光」を踏まえて「包囲音」とでも呼びたいところ)により、別の場所へと一瞬のうちに送り届けられ、その場に投げ込まれる感覚の作品群を。

V.A.『エチオピアの音楽』tr.9「皇帝の到着」
試聴トラック:https://www.amazon.co.jp/%E3%82%A8%E3%83%81%E3%82%AA%E3%83%94%E3%82%A2%E3%81%AE%E9%9F%B3%E6%A5%BD-%E6%B0%91%E6%97%8F%E9%9F%B3%E6%A5%BD/dp/B0017GSGHK
 ラスタファリアニズムが熱狂的に称えたエチオピア皇帝ハイレ・セレシエの到着の模様の現地録音。俯瞰的視点から、見渡す限りの人の波の広がりが大河の流れのようにゆったりと進み、厳かに鐘が鳴り渡り、あちこちで歓声が上がるかと思えば、手前では何やら話し込んでいる‥‥という、多層/多重なレイヤーの重なりがじりじりと動いていく。圧倒的な音後景の顕現。前半のハイライトのひとつ。

V.A.『Streets of Lhasa』tr.17
試聴トラック:https://www.youtube.com/watch?v=PBbEn-fdB0o
 タイトル通り、チベットのラサ市街における現地録音。四方八方から襲い掛かる混濁した雑踏音に、方向感覚を喪失し、くらくらと酩酊してしまう。Sublime Frequenciesレーベルらしい猥雑なストリート感覚。アルバム全体の編集はSun City GirlsのAlan Bishopが務めている。

前林明次『I/O Distant Place』tr.4+tr.10
試聴音源なし
 やはり異国の地のフィールドレコーディング音源。タイトル通り、自分の部屋に居ながらにして、別の場所に瞬間転送され、その場所に立ちこめる響きや匂い、温度/湿度の只中に放り込まれる感覚。自身の頭部にマイクロフォンを装着して、街を歩き回ったバイノーラル録音。


Christina Kubisch&Eckehard Guther『Unter Grund』tr.1
試聴トラック:http://www.gruenrekorder.de/?page_id=14340
 このパートの冒頭にプレイした『Mosaique Mosaic』チーム再び。こちらは独ルール地方を支える地下揚排水システムのフィールドレコーディングから、地下水位の上下に即して、いったん停止した巨大機械が再び作動を開始するまでの間を抜粋して聴取。動作音と入れ替わるように暗騒音が揺らめき立ち上り、暗闇を見詰める視線に閉所恐怖が充満する。


休憩

Moondog『Viking of Sixth Avenue』
試聴トラック:http://honestjons.com/shop/preview/27437
 ムーンドッグ活動初期の街頭録音から。チャカポコとしたドンカマ的リズムとハンマー・ダルシマーの音色。ムーンドックの演奏する姿は都市の一点景である一方で、やはり録音は演奏する彼へと向かい、環境音は単に背景に過ぎない。


Michael O'Shea『Michael O'Shea』 A-1
試聴トラック:http://www.sheyeye.com/?pid=50059285
 ハンマー・ダルシマーを改造した創作楽器「モ・カラ」を演奏するストリート・ミュージシャン。WIREのB. C. GilbertとG. Lewisがプロデュースし、彼らの起こしたDomeレーベルからリリースされた。緩やかな打撃が弦の上をどこまでも移ろう。



映像解説「生成/浮上する都市のイメージ」
音源の聴取とコメントが織り成す文脈に、視覚イメージにより補助線を引く試み。ここではボードレールの愛したGiovanni Battista Piranesi(1720-1778)とCharles Meryon【1821-1868】をまず採りあげ、前者による古代ローマの想像的再現『Campus Martius』をヘテロトピックな「コラージュ・シティ」(Colin Rowe)の先取りと評価し、後者によるパリ市街図の幻想による侵食とその再抑圧を、「表象の空間」(Henri Lefevre)の視点からとらえた。続いてWOLS(Alfred Otto Wolfgang Schulze)【 1913-1951 】と難波田史男 Fumio Nambata【1941-1974】において無意識から浮上する都市イメージに関し、難波田の愛好したPaul Klee【1879-1940】の分割と反復による構築と対比させた。
 
            Giovanni Battista Piranesi ジョバンニ・バッティスタ・ピラネージ

 
                     Charles Meryon シャルル・メリヨン

 
             WOLS  ヴォルス             難波田史男 Fumio Nambata


第3部 路傍の芸

藤本由紀夫『Ears on the Rooftop』
試聴トラック:http://www.geocities.jp/paganrail/omegapoint/editionOP-2.html
 屋上に据えられた金属パイプを通して聴く周囲の音響。ごーっという管の共鳴のうちに環境音の断片が浮き沈みする。大道芸の沸き立つイメージに冷水を浴びせかけ、しかるべき距離と冷静さを確保するための1ステップ。

Willem Breuker『Lunch Concert for Three Barrel Organs』B-1
試聴トラック:http://www.sheyeye.com/?pid=90378353
 大道で懐かしい響きを奏でるはずのストリート・オルガンが、広場に3台も集められて、口角泡を飛ばしながら議論し合うゲリラ的パフォーマンス。すわ何事かと慌てる市民。ブロイカー本人の証言によれば警官まで駆けつけたという。


里国隆『路傍の芸』tr.1~3
試聴音源なし
 盲目の伝説的ストリート・ミュージシャン(奄美出身)。沖縄那覇の市場アーケードでの演奏に幸運にも出くわした宮里千里による貴重な録音(彼は『イザイホー』の録音者でもある)。鋭く律を刻む四ツ竹、繊細にしてグラマラスな箏の音、地を這い胸を刺し貫く声の強度、周囲を取り囲む聴衆のざわめき、そしてその向こうから聞こえる買い物客の賑わい‥‥何もかもがくっきりと墨色鮮やかに生々しい。歸山幸輔特製スピーカーがまた新たに潜在能力を解き放った。里と宮里の曲間の会話も収録されており、「空間を丸ごととらえる」宮里ならではの仕事。

Satomimagae『Awa』tr.4+tr.9
試聴トラック:https://satomimagae.bandcamp.com/album/awa
tr.9 Official MV https://www.youtube.com/watch?v=9aP5lMtVZRc
 街頭演奏の現地録音ではないが、フィールドレコーディングによる都市のざわめきを挿入する特異な女性SSW。「これはギターの弾き語りではない」と自ら主張するように、ライヴでも流される都市の音響は、単なる装飾や背景にとどまることなく、鋭く張り詰め彫り刻まれた声/ギターと拮抗して、ざらざらと粗く冷ややかに耳にやすり掛けして、どこまでも聴き手の覚醒を促す。私や津田の愛聴盤である本作品でもまた、歸山スピーカーはこれまで聴いたことのない異次元の再生ぶりを見せた。

hofli『Lost and Found』tr.11
試聴トラック:http://www.pastelrecords.com/koencafe/?p=218
参考文献:http://miminowakuhazushi.blog.fc2.com/blog-entry-265.html
 市街の片隅で演奏を繰り広げるバスキングを何度も見かけ、これに刺激され、ヨーロッパの地下鉄駅通路でのフィールドレコーディングにオモチャのスティールパンを重ねたものだという。都市のざわめきの向こうの(フィルタリングされた)演奏風景ではなく、演奏音によって紗を掛けられ、その網目に浮き沈みする都市の光景。「たったひとつの現実」が「もうひとつの現実」への回路をすっと開いてみせる。


第4部 音響都市の生成

 一瞥=スナップショットの集積による第1部に対し、こちらは腰を据え、たじろぐことのない凝視=持続により、都市が生成していく様をとらえる試み。第3部の里国隆あたりから大きく押し広げられた耳が、未曽有の事態を目撃するに至る。

津田貴司:未発表音源
試聴音源なし
 公園の池の水位調節用地下水路の空気抜きの穴に、マイクロフォンを下ろして収録した音響とのこと。水音と広がる響きが空間のヴォリュームを明らかにする(身体の中で『Unter Grund』や『Lost and Found』と響き合う)。覗き込む闇の奥にある広がり。しかし、途中から響きは聴き手の背後にも広がり、あたり一面に立ちこめて、耳は空間の内部へと引き込まれ立ち尽くす自分自身を発見する。何の抵抗もなく足を踏み外すように、微かな兆候すらなく世界の色合いが一変する瞬間。ここでもまた歸山スピーカーの力が際立った(聴き手を包み込む背後の音まで再生できるなんて。モノラルなのに)。

Gilles AubryStéphane & Montavon『Les Ecoutis, Le Caire』
試聴トラック:http://www.gruenrekorder.de/?page_id=2301
 以前から様々な機会にプレイしてきた音源だが、今回初めてしかるべきプログラムに組み込めた気がする。茫漠とした響きの雲の広がりが、動き揺らめいて次第に濃淡を明らかにし、やがてそこに見知った風景を映し出す。この占い師の水晶玉を覗き込むような体験を引き起こすのは、オーブリー自身が「間接的聴取」と名付けた手法(というより姿勢か)であり、おそらくは直前にプレイした津田の音源同様、対象/外界からの距離の異なる複数のマイクロフォン間のミキシング・バランスを連続的に変化させることにより得られる効果なのだろう。しかし、そこに生じる現象は左右のステレオ・パンニングなどとは異なり、体感総体を耳を通じて揺さぶりたてる世界認知(そこにいる/外部がある感覚)の変容にほかならない。その初期の中平卓馬の写真を思わせる、冷ややかにモノクロームで凝縮された「覚醒感」は、Satomimagaeと確かに通じるものがある。

『イザイホー』tr.6+tr.10
試聴トラック:http://www.reconquista.biz/SHOP/BsF006.html
 前回、冒頭に聴いた音源を再び。「最初に聴いてしまったために、そのすごさがじゅうぶん伝わらなかったのではないか」との反省に基づいての再演だったのだが、いやあ驚いた。最初の声の揺らめきの艶めかしく濡れたような輝きなど、絶対これまでの再生では聴いたことがなかったし、本当にこの世のものとは思われないような美しさだった。民俗学/民族学に大きく傾いた前回の聴取モードが、やっぱりアートより伝統/生活のがすごいよね‥とか、お婆ちゃんて最強無敵だよね‥というところに話を落とし込んでしまうのはツマラナイと感じていたのだが、それは結局、いま耳にしている響きの在処を、その向こうの実体に、そのキャラクターや物語に求めてしまうからだ。そうではなく、あくまでも「手前」にとどまって響きを構成するレイヤーを聞く‥‥という行為を、藤本由紀夫を導入に里国隆、Satomimagae、hofli/津田貴司、Gilles Aubryと強力極まりない音源に対して繰り返し続け、耳をつくってきたことが、こうした輝かしい「奇跡」をもたらしたのだろうか。なお、今回は締めくくりの「区長挨拶」も聴き、録音者である宮里の意識した「丸ごととらえる」ことをフォローした。

Gilles Aubry『The Amplification of Souls』tr.2
試聴トラック:http://www.adocs.de/buecher/sound/amplification-souls
 最後は今回のシンボルとなるアーティスト、ジル・オーブリーの新作から。キンシャサでのキリスト敦礼拝のフィールドレコーディング。まるで空爆のように炸裂する説教師の歪みまくったアジテーション。それに呼応して叫び、沸騰する民衆の怒号。レイヤーを切り出すことなどかなわず、ひたすら量子化してマイクロフォン/耳に襲い掛かる音の爆発/激流。「五月革命」より混乱/液状化し、『イザイホー』よりトランスした究極音源。初めて聴いた時は、小冊子に付属した体裁もあって、何だ、文化人類学/社会学調査のリポートかと失望したりもしたのだが、この日、この流れの中でようやく本領を発揮してくれた。


サルヴェージ

Satomimagae『Koko』tr.3「Niji」
Official MV https://www.youtube.com/watch?v=SbzGx_fy_wM
 響きの深淵へと深く深く沈潜した耳を(魂を?)現実世界へと浮上させるための儀式。今回は第3部でプレイしたSatomimagaeからもう1曲。不愛想に低く呟く声が、次第に高揚し、深い深い井戸の底から頭上に小さく開けた明るみを目指して、各層を貫いて力強く浮かび上がる「浮上感」にすべてを託して。

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今回も驚異的なパフォーマンスを見せた歸山幸輔制作の特製スピーカー  撮影:多田雅範   


【参考文集】

 今回も関連文献からの引用をちりばめた参考文集を配布した。0~7の8節で構成されるが、これもまた映像資料同様、テクスト/アーカイヴの視点から新たな補助線を引く試みであって、今回のプログラム自体の解説/絵解きではないことに注意されたい。引用元はご覧のように多岐に渡るが、今回のプログラムの背骨として、やはりヴァルター・ベンヤミンの視線/思考の存在が大きかったことを告白しておこう。ベンヤミン読解としては近森高明『ベンヤミンの迷宮都市』(世界思想社)が新たな視点を与えてくれた。合わせて感謝したい。


0.都市の時間・空間
 高祖岩三郎『ニューヨーク烈伝』
 ジェイン・ジェイコブズ『大都市の死と生』
 福島恵一「ロワー・イースト・サイド」 『アヴァン・ミュージック・ガイド』所収

1.見えない都市
 磯崎新『空間へ』
 磯崎新『いま、見えない都市』
 ヴァルター・ベンヤミン著作集11『都市の肖像』
 イタロ・カルヴィーノ『見えない都市』

2,溶解/沸騰する都市
 西山長夫『パリ五月革命私論』
 佐伯隆幸『最終演劇の誘惑』

3.写真都市
 鈴木一誌「廃墟のまなざし」 東京都写真美術館編『森山大道論』
 森山大道・鈴木一誌『絶対平面都市』

4.地図、抽象空間、都市計画
 永井荷風「日和下駄」
 ルイ・アラゴン『パリの農夫』
 アンリ・ルフェーブル『都市革命』
 レム・コールハース「都市計画に何があったのか?」 『S, M, L, XL+』所収
 コーリン・ロウ、フレッド・コッター『コラージュ・シティ』

5.都市の諸相/多層、年代の積み重ねた地層
 永井荷風『日和下駄』
 ルイ・アラゴン『パリの農夫』
 川田順造『母の声、川の匂い』
 矢作俊彦「夢を獲える檻」 『複雑な彼女と単純な場所』所収

6.都市の暗黒
 金子光晴『どくろ杯』
 平岡正明「満州貧民街における小悪魔の飽食」 『官能武装論』所収
 洲之内徹「掌のにおい」 『洲之内徹文学集成』所収

7.大道芸人たち
 金子光晴『どくろ杯』
 宮里千里「漂泊のマレビト」 里国隆『路傍の芸』CDライナー所収

松籟夜話第九夜ちらし縮小
デザイン:川本要


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ライヴ/イヴェント・レヴュー | 21:47:45 | トラックバック(0) | コメント(0)
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