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福島恵一

Author:福島恵一
プログレを振り出しにフリー・ミュージック、現代音楽、トラッド、古楽、民族音楽など辺境を探求。「アヴァン・ミュージック・ガイド」、「プログレのパースペクティヴ」、「200CDプログレッシヴ・ロック」、「捧げる-灰野敬二の世界」等に執筆。2010年3~6月に音盤レクチャー「耳の枠はずし」(5回)を開催。2014年11月から津田貴司、歸山幸輔とリスニング・イヴェント『松籟夜話』を開催中。

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Israja, Lau Nau Live @ Super Deluxe 28th Oct. 2010
 フィンランドの歌姫2人の来日とあって、激しい雨風の中、六本木まで行ってまいりました。Israjaは不思議系の1stと2nd、Lau Nauは倍音が繁茂した1stだけしか聴いてないけど(共にその後作品を出していることを知りながら、入手できないでいました)。

 まずは粉末ソーダの素の妖精のようなmeso mesoの声とオモチャとギターとアコーディオン(それと足首に結んだ鈴)。サポートの女性2人組「畔」はトイピアノ鳴らしたり、リコーダー二重奏したり、オモチャを奏でたり(ふだんは影絵もやるとのこと)。こちらはアラレの吹き寄せ感覚。続いてギター・ノイズに青ざめた女声が光臨するHELLLに、Lau NauのパートナーAntti Tolviによるピアノ黒鍵トレモロ・ハレーション。
 みんな悪くないんだけど、ライヴハウスの空間のまずさを上回れない。タバコの煙、休憩のたびにグラスを割る粗忽者、曲が始まってもナンパをやめない恥知らず、演奏中ずっと世間話している大馬鹿者(どーも登場バンドの知り合いらしい)。お前らみんな帰れ!と思うけど、きっとライヴハウスの経営を支えているのは、こうした方たちなのでしょう。だから来なければいいのはこっちの方で、だからずっと行かなかったんだけどね。

 などとぐちぐち考えているうちにIsraja登場。白いパーカーのフードに透き通った金色の髪を包んだ彼女は、まるで変装した天使。愛らしい線画の絵本を題材にした「Pete P」の胸を締め付ける哀しみから始まった歌唱とキーボードのメモリを切り替えながらの演奏は、次第にラウドさを増し、マシニックなビートを強め、エッジを切り立てて、どんどんダーク&ヘヴィになっていく。線は細いが剄さを秘めた声はテンションを高め、サウンドに埋もれてしまうことがない。フードを脱ぎ、髪をかき上げ、またフードをかぶり‥。意識的なパフォーマンスがかき立てる、北欧と言うよりロシア的な狂おしいゴシック世界。

 カリスマティックな空気をまとったIsrajaに比べ、ギターを抱えてステージに現れたLau Nauは、最初、垢抜けない田舎娘のように見えた。赤みを帯びた髪と母性3割増しの横顔。その彼女が脇の小テーブルから取り上げたベルを振ると、さあーっと響きが振りまかれ、空気の色が変わる。こうしたリトル・インストゥルメントや息、手拍子、口笛など、細かいサウンドをサンプル&ホールドを使って重ね合わせるやり方はもはや常套手段だが、彼女はまるでキッチンの魔術師のようににこやかに、見たことのない不思議な空間を開いて見せる。背景に投影されている意図的に粒子を荒くして、輪郭をおぼろに解体し、運動をアブストラクトな色斑の明滅/遷移へと変換した映像同様、音もまた、うすくうすく広がり、互いに浸透しあいながら、ざらざらとした手触りをつくりだす。
 その手触りを足裏で確かめるように、声がゆっくりと渡っていく。輪郭を際立たせることなく、粉雪のような舌触りを残してあっさり溶けていく声の、氷砂糖のような透明さ。うすくうすくおぼろにひろがって、どこまでもどこまでもただよっていくひんやりとしたひびき。気まぐれにオモチャに延びる手と、慈しみに満ちたサウンドの取り扱い。ここではいろいろなものが、ひとつになっている。その時、彼女は誰よりも魅力的だった。
 終曲ではオモチャのヴォイス・チェンジャーを使って、蝙蝠の悲鳴のような軋みで空間を埋め尽くし、それに荘厳なオルガンを加えて、聖なるヴォイスを聞かせる茶目っ気も見せてくれた。

 ‥というわけで、やっぱり来てよかったかも。手に入れられなかった彼女らの作品も買えたし。持参したCDにサインももらえたし(何とミーハーな‥)。Lau Nauはアフターアワーズに少し咳き込んでましたね。タバコに弱いんじゃないかな。かわいそうに(別会場では全面禁煙とのこと)。そう言えば彼女は、まだ小さなお子さん連れでしたね。握手してくれた掌の柔らかさは「お母さんの手」だから?


Lau Nau 1stのリーフレット内側の写真
多種多様な植生がひとつになる
「雑木林」系の魅力

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ライヴ/イヴェント・レヴュー | 01:05:17 | トラックバック(0) | コメント(0)
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